怪奇骨董たおやめぶりっこ

ますらおぶりに憧れるブログ。涙がちょちょぎれちゃう。だって怪奇骨董たおやめぶりっこだもの。

「K.A. (Kohntarkosz Anteria)」MAGMA

プログレレジェンドシリーズ。フランスのプログレバンド、MAGMA の現時点での最新スタジオアルバム。2004年、フランス製。「半年に一度くらい突発的に聴きたくてたまらなくなるアルバム」として、「HARDCORE SUPERSTAR」を挙げましたが*1、こちらは毎晩でも聞きたくなるアルバム。2004 年の暮れにやってきた 2004 年最高の 1 枚。毎日聞きたい衝動を抑えて生きていますが、久々に解禁しましたメモ。

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http://ax.phobos.apple.com.edgesuite.net/images/badgeitunes61x15dark.gifMagma - K.A

MAGMA web radioの一番下の「K.A.I」が第 1 楽章になりますのでぜひお試しアレ。

MAGMA 入門に最適な作品

なにげに iTunes には MAGMA 作品が充実していて、昔みたいにいつ入荷されるか分からない上に無駄に高価という苦行を経なくてもいろいろ聴けるので、「iTunes で聴きまくる MAGMA」みたいな特集エントリーをうっすら構想しつつも、するだけってことでここでは大雑把に。

MAGMA は、ドラマーのクリスチャン・ヴァンデが、ジョン・コルトレーンの死に絶望しながらも突如宇宙から毒電波を受信して '70 年に立ち上げたバンド。「THEUSZ HAMTAAHK」三部作を受信した前後の '72 〜 '75 年に絶頂の限りを尽くす。

プログレのフィールドで”声”を楽器として最大限に活かしているのはフランスの怪物バンド、MAGMA。MAGMAの聴きどころは素晴らしくグルーブするリズム隊に加え、なんといっても特異なコーラス部隊。彼らは「コバイア語」という音響言語を自作し、マントラに似た歌詞を優れたコーラスワークで展開します。

http://d.hatena.ne.jp/sivad/20070929#p1

オルフ、ストラビンスキー、その他ミニマルミュージック、ジャズから果ては東欧フォークロアなどなどさまざまな音楽を取り込み壮大な組曲を練り上げる【驚異の】音楽を創造した。それは「ZEUHL MUSIC」と呼ばれ、アングラ世界に多大な影響を与えた。メインストリームでこんなことやったら狂人扱いで永久追放だわさ。

MAGMA といえば、ZEUHL MUSIC 確立の金字塔「M.D.K」、あるいは人類史上稀に見るライブ盤「Theatre du Taur - Toulouse 1975」などが定番でありますが、ここでは「K.A.」をイチオシしたい。

K.A.

2004年発表の「K.A.」でありますが、原曲は '72 年頃に作曲・演奏されていたようです。その後は完成品として練り上げられることはなく、断片が他の曲の一部に織り込まれたり独立して演奏されたりと離散していました。そいつを、「よしやるぞ」と復元&再構築したのが本作であります。全3楽章。30年前の傑作「LIVE」に劣らない異常なテンションで繰り広げられる MAGMA ワールド。K.A.Part1で笑い、K.A.Part2で笑い、K.A.Part3に突入することには不思議と泣いている。

K.A. Part1

先述の MAGMA Web Radio で聴けるように、いきなり全開怒涛のコバイアワールド。きたきたきた、結成 30 年を越えるバンドが汗を飛び散らし白目をひん剥いてこんな音楽をやってるなんてと爆笑せざるをえません。小さな単位のコバイアフレーズを執拗に繰り返しながら前進あるのみで展開してゆくさまはフィリップ・グラス*2

YouTube - Magma , K.A , extrait 2


K.A. Part2

鬼気迫る Part1 に対して、こちらは長調で華やか。大きく2つのパートに分かれています。ここでは、男女パートに分かれたコバイアコーラスの掛け合いを堪能しましょう。前半の真ん中あたり、がくんとテンポが変わって短調に切り替わる展開が絶妙。後半はさらに平和な雰囲気になり、クリスチャン御大も歌います。雷鳴のように突如不吉な音になり、Part3 になだれ込みます。

過去作品のフレーズが6拍「うぉーうぉーうぃーうぃーせんどー」→「うぃーうぃーうぉうぉーせど」5拍にスピードアップして登場したりマニアもにやり。

YouTube - Magma - Callac - Printemps 2005


K.A. Part3

こちらも大きく2つのパート。前半はかつて「Om Zanka」として断片が公開されていたパート。MAGMA 史上最も悲愴で美しいパート。その終結部分から後半に転移する場面がちょこっと動画でありました。

YouTube - Magma live au Triton

カコイイ!

で、後半は重厚なコバイアコーラスが復活して、悪魔に魂を売った邪悪なソウル・ファンクをうっすら醸しつつ、かつて「GAMMA ANTERIA」と呼ばれていた壮大な「ハレルヤ」コーラスでクライマックスへ。このメサイアっぷりはヘンデルを凌駕した。

まとめ

絶叫・脱糞。

このつっかかるフレーズは 5+6=11 拍子でとか、この奇数拍子のリフと偶数拍子のコーラスがポリった上にクリスチャンのドラムが強靭な精神を持ってないとできないようなタイミングでアクセントを切り替えてきてうんぬんみたいな細かい聞き方をして無理やり楽しもうと努力するまでもなく圧倒されっぱなしなところに感服。また、「そういう楽しみ方」をしようと思えば楽しいポイントは山盛りである。

あ、あと、あとあとあとあと、本作を入門にイチオシする大きな理由は、コバイア語の歌詞カードがついていること。歌詞カードを見ながらコバイア語をおっかけることで、どう考えても無茶な音楽についてゆくことができる。喰らいついているうちに MAGMA の音楽が全身に浸透してくるのである。それは侵食とも言う。

傑作です。お気に入り度:93点