2014年よかったアルバム:Jazz(海外勢)編
Jazzの入手ルートは、主にAmazon MusicやiTunes Storeの新作をチェックして面白そうなのを買う、または馴染みのレコード屋のおっちゃんのお勧めを買うので、結果としてベタなラインナップになったような気がします。
目次はこちら。
2014年よかった音楽(目次) - 怪奇骨董たおやめぶりっこ
- 大賞
- Pat Metheny Unity Group《Kin (<-->)》
- 金賞
- Flying Lotus《You're Dead!》
- Dave Liebman, Richie Beirach, Ron McClure & Billy Hart《Quest - Testament - Live in Stockholm 2012》
- Marc Cary Focus Trio《Four Directions》
- 銀賞
- Antonio Sanchez《Three Times Three》
- Brad Mehldau & Mark Guiliana《Mehliana: Taming the Dragon》
- Omer Avital《New Song》
- Keith Jarrett/Charlie Haden/Paul Motian《Hamburg '72 (Live)》
- MARC RIBOT TRIO《Live At The Village Vanguard》
- Denis Guivarc'h Trio《Reverse》
- Mammal Hands《Animalia》
- えくすきゅーず
- あたしゃJazzのリスニングについては網羅性も深度もてんで素人なので、だいたいMiles Davisの仕事のどのあたりから分岐した音楽かな、というのを考えておりますよっと。
- Jazzはどうしても新作半分過去作品半分といった聞き方になるのですが、本稿ではなるべく2013末〜2014年発表の作品にしぼります。過去のライブ音源が2014年に発売、ってのも含む。
- 凡例
- 《アルバム名》
- 『曲名』
- 【アーティスト名】(敬称略)
- [番組名]
Jazz部門(海外勢):大賞
Pat Metheny Unity Group《Kin (<-->)》
1曲めの冒頭から何かが起きているただならぬ雰囲気、雰囲気というか実際そこになっているリズムは何者なのか聴力の足りないあたいには皆目分からないが、わかっていない状態が実に心地よくたまらない。
「今ジャズはリズムの時代」と新進気鋭のミュージシャンが様々に野心的な仕事をしているのを聴いて喜んでいたけれど、リズムの複合、拍子の交錯、鋭いアドリブ、疾走するアンサンブル、緩急キューカンバーこのベテランがとっくに先行して抜き去っていたんだ!のか?などとすったまげたもんだ。ってエイヤで書いてから聞き直したら、そうでもないかな?などと思い始めましたが、いや、いいや、大賞で。じゅうぶん。
Pat Metheny Unity Group - Kin (←→) Preview - YouTube
Pat Metheny - Rise Up! (Kin, 2014) - YouTube
Jazz部門(海外勢):金賞
Flying Lotus《You're Dead!》
Flying Lotusさんとはこのアルバムではじめまして。Flying LotusさんをJazz部門で取り上げることについて、Flying Lotusさんのファンは「Jazzと一緒にするなウゼぇ」と思うでしょうし、Jazzファンは「あんなのJazzじゃない」と思うかと存じますが、ここではこのジャンルで。
始まった瞬間の「ぼびゃー」という一音で思わずコーヒーこぼしつつ、これが傑作であることを確信せざるをえないインパクト。ハービー・ハンコック氏を始めとしたJazzプレイヤー、あと全然存じ上げなくて恐縮ですがきっとR&B/HIPHOP界隈のラッパー、歌手など様々なミュージシャンの客演を自然に巧みに織り交ぜノンストップ組曲に仕立てあげられました。
Aの人がちょっとBの音源をサンプリングしてみました、ちょっとB関係者と共演してみましたレベルで「AとBの融合」とキャッチコピーがつくのは総じて駄作ですが、ここでは全て渾然一体となってFlying Lotusランドを建設されているんじゃないでしょうか。彼の過去作を聞いていないので憶測でものをいいます。
Flying Lotus - Never Catch Me (Official Audio) ft ...
Dave Liebman, Richie Beirach, Ron McClure & Billy Hart《Quest - Testament - Live in Stockholm 2012》
Miles Davisの《On the Corner》《Dark Magus》などに参加していたサックス/フルート奏者Dave Liebmanのカルテットによるライブ。
Miles Davis『Prince of Darkness』『Paraphernalia』、John Coltrane『Brazilia』、Bill Evans『You and the Night and the Music』、Lee Konitz『Knowinglee』などを題材に、「アコースティック編成/生演奏の究極」を指向する音楽。特に原曲が大好きな『Paraphernalia』がチョイスされていて興奮。1曲1曲、1音1音の緊張感がとても高く、奏者も聞き手も「ノリで楽しむ」の対極「固唾を呑んで聞き入る」たぐい。
David LIebman - Trane Lives! - YouTube
Miles Davis - Paraphernalia - YouTube
Marc Cary Focus Trio《Four Directions》
発表は2013年。
1曲め!鍵盤奏者がモノシンセ&エレピを弾き、シーケンシャルなベース、淡々としながら手数を入れてくるドラムと合わさって後期Soft Machineと聞き間違えるほど。この1曲めでぐっとプログレごころを持ってかれたと思ったら、以降はアコースティックメインなのでまたびっくり。
2曲め曲名がWaltzだけどピアノのペースに飲み込まれると4拍になっちゃうし、3曲めは1拍5連のリズムが冒頭に提示されるけど途中から何が何だか分からない状態になったり、終始そんな具合でリズム感をかき乱されるのがたまらない。あと、全体的にベースのリズム感が狂気じみております。7曲目の冒頭の音がMAGMAだ!と思いますよね。
Marc Cary Focus Trio - Waltz Betty Waltz - YouTube
Marc Cary's Focus Trio - Minor March - YouTube
[asin:B00KOMGY8Q:detail]
https://itunes.apple.com/jp/album/four-directions/id884403813?uo=4&at=10lqt2
Jazz部門(海外勢):銀賞
Antonio Sanchez《Three Times Three》
Pat Methenyのグループで活躍するドラマーAntonio Sanchezの2枚組作品。
- DISC1は、現代最高のピアニストと謳われるBrad Mehldauを迎え、ベースにMatt Brewerを配したピアノ・トリオでリスナーに挑みます。録音は、2013年10月27日。
- DISC2の前半は、ギターにJohn Scofield、ベースにChristian McBrideと、これまた超絶技巧のメンバーを迎えてのセッション。録音は、2013年12月4日。
ドラマーがリーダーとなって彼ら名手たちと丁々発止の演奏を繰り広げる、そこにそれ以上の言葉が必要だろうか?「いや、必要だろ、これブログだから」DSIC2の1曲目『Fall』が白眉。『Fall』の演奏に駄作なしの法則。
Antonio Sanchez - One for Antonio - YouTube
Brad Mehldau & Mark Guiliana《Mehliana: Taming the Dragon》
そんな現代最高のピアニストと謳われるBrad Mehldauが、Avishai Cohenとの活躍(Avishai Cohen Trioはガチ)で注目され最前線突っ走り系ドラマーMark Guilianaとデュオ、しかも、エレクトリック・・・だと・・・!ブラッド・メルドー、お前もか!という大げさなリアクションをもって迎えた問題作。ここでのMark Guilianaといえば人力ドラムンベースというとなんか陳腐な表現だから・・・「すごいポストロック」にしましょうか、だめ?じゃあ「とてつもない《ProjeKct X》」はいかがでしょう。
最新のライブ映像が高画質高音質でいくつも見られるのでそちらを是非ご参照ください。
Mehliana (Brad Mehldau & Mark Guiliana) - Hungry ...
「とてつもなくないほう」もおいておきますね!
ProjeKct X - The Business of Pleasure / Hat in the ...
「現在に蘇った《Ruta And Daitya》」とか・・・
Keith Jarrett / Jack DeJohnette - You Know, You Know ...
完全に余談でした。
Omer Avital《New Song》
Avishai Cohenの名前が出てきたので、イスラエル系ベーシストOmer Avitalの作品も。今やJazzとR&B/HipHopとの濃厚なカラミが注目されていますが、ユダヤ/イスラエル系というのももうちょっと掘り下げたいですね。ですよ。
当時のレビューこちら参照
Avital meets Avital - "Maroc" - YouTube
[asin:B00HZ0FETU:detail]
https://itunes.apple.com/jp/album/new-song/id780589821?uo=4&at=10lqt2
Keith Jarrett/Charlie Haden/Paul Motian《Hamburg '72 (Live)》
2014年はCharlie Haden氏が亡くなり、直近のKeith Jarrettとのデュオなど、関連作がいろいろ出た年でもありました(Paul Motian氏も2011年死去)。そのなかでこれが一番よかったなというやつです。’72年のライブ。あたしゃKeith Jarrettに関してはかなり不勉強で、この時代、メンバーとの前後関係をまったく把握しないまま聴いていますことをお許し下さい、主よ。
『Rainbow』など甘いトーンながら殺気漲る演奏は期待通りを凌駕してきました。が、曲名『Piece For Ornette』通りドフリージャズをやるんだ!と驚きました。Charlie Haden/Paul MotianはOrnette Colemanと深い関係にあるから分かるものの、キースが、と。ただ、ここでキースはサックスを吹いているので、もしピアノを弾いたら?というのは想像できないまま心残りが残ってしまいました。
Keith Jarrett - Berliner Jazztage 1973 - YouTube
[asin:B00P856INU:detail]
https://itunes.apple.com/jp/album/hamburg-72-live/id939733721?uo=4&at=10lqt2
MARC RIBOT TRIO《Live At The Village Vanguard》
ギタリストMARC RIBOTのライブ録音。時に凶暴な退廃的なインプロビゼーションが聞けてだいまんぞくです。特にコルトレーンの『Sun Ship』。
SUN SHIP - MARC RIBOT TRIO - LIVE AT THE ...
Denis Guivarc'h Trio《Reverse》
MARC RIBOTはちょっとつらい?ではサックス奏者Denis Guivarcのトリオはいかがでしょうか。フリージャズ系?っていうんですか?コード感、モード感、調性感のないぐにゃぐにゃとしたサックスに、リズムもタイトかつぐにゃぐにゃです。
Mammal Hands《Animalia》
挑戦的な、先鋭的な、あるいは荒れた音楽がずーっと続いてきたので最後は癒し系。音はコンテンポラリーなアコースティクなカルテットな、な。でも耳を澄ませば、5拍子(4+6を含む)7拍子などフックが効いていて刺激的。癒しの音像と適度にツボをついてくるリズムのバランスがバランスでバランスしている。まあひとつYoutube音源を聴いてみてくださいよ。
05 Mammal Hands - Bustle [Gondwana Records ...
[asin:B00MJQMG28:detail]
https://itunes.apple.com/jp/album/animalia/id907572216?uo=4&at=10lqt2
途中「ブラッド・メルドー、お前もか!」などと声を上げてしまいましたが、いわゆる「今ジャズ」という潮流はベテランをも巻き込んで怒涛となってなんたらかんたら。この先数年間、Jazzが一体どうなってしまうのかワクテカが止まりません。
そんじゃーね。