「One Down, One Up: Live at the Half Note」「Giant Steps」「Blue Train」John Coltrane
何十年も前に死んだジョン・コルトレーン!・・・今日聴いた音楽。新入荷。です。
最近、たまたまあまり聴かずに放置していた「[asin:B00005L8YM:title]」に針を落としたら(iTunes の MP3 だけどさ)、すこぶる良くて 3 作品に手を出してみた第一印象。第一印象は全部「★★★★★」。普段やっとるプログレやジェーポップに対する「★」の裁量基準じゃあ甲乙がつけられんのである。
「One Down, One Up: Live at the Half Note」
- John Coltrane (tenor saxophone, soprano saxophone)
- McCoy Tyner (piano)
- Jimmy Garrison (bass)
- Elvin Jones (drums)
ジャズ100年史上の金字塔「至上の愛」から数ヶ月、絶頂期のコルトレーン黄金期カルテットによる迫真のライブ!
'65 年製品。悶絶。音質上々演奏最強。
「One Down, One Up」いきなり 27 分壮絶に吹きっぱなし。マッコイが抜けトリオになり、ジミーが抜けデュオになっても、エルヴィンとひたすら格闘し続ける。「最後にみんなで合奏終わり」って段取りなんだろうけど、二人のバトルがすごすぎて立ち入れないのだろうか。クリムゾンでたとえると・・・エルヴィンは「21世紀の精神異常者」におけるマイケル・ジャイルズのプレイを 100 倍断熱圧縮したようである。
続く「Afre Blue」では、前曲で圧縮されたマッコイのエネルギーが爆発する。ピアノトリオの演奏も堪能できて贅沢だわあ。エネルギー補給が済んだ御大が半ばからゆるやかに滑り込んできてだんだんカルテットとして体勢が立て直され勢いを増し始めたところで、ラジオ番組の尺の都合でフェードアウト。がーん。
と、そんなパターンで「Song Of Praise」、そいでおなじみ「My Favorite Things」と続きます。
本作品演奏メンバーの映像を Youtube で。これらにドーピングターボをぶっこんでハイな演奏を想像して「One Down, One Up〜」の姿を垣間見てください。
▼John Coltrane Quartet - My Favorite Things
▼John Coltrane Quartet- Afro Blue
- John Coltrane (ss, ts)
- Pharoah Sanders (ts)
- Alice Coltrane (p)
- Jimmy Garrison (b)
- Rashied Ali (d)
- Algie DeWitt (bata d)
- Juma (per)
- Billy Taylor (ann)
ここでの「My Favorite Things」はすべてを超越している。「One Down, One Up: Live at the Half Note」の演奏は、これにくらべてかなりクールだ。クリムゾンでたとえると・・・「[asin:B000E1KN70:title]」がたまらん!と感じる人すべてに贈る文字通り命を燃やす演奏。音質はよろしくないですよ。
「Giant Steps」
- John Coltrane ts, ss
- Tommy Flanagan, Cedar Walton, Wynton Kelly p
- Paul Chambers b
- Art Davis, Lex Humphries, Jimmy Cobb ds
'59年製。
表題曲が 8 万回聴いても飽きないような魅力を持っている。すごく変化しているのに全然解決せずつんのめりながら進行し続けるコード。そいでもって徹底的に敷き詰められたフレーズ。とりあえず Youtube で 80 回くらい聴くといいよ。
▼Giant Steps
解説:ズージャでGO!(第3部 第7話)正三角形は不安定 〜ジャイアント・ステップスの秘密〜
楽典的な理解はさておき、以下のような感覚は味わえるのではないでしょうか。
いわゆる安定感(終止感)が希薄になる。トニックと呼べる強い引力を持ったコードがないので、トーナリティ(調性)が曖昧になり、音楽が不安定になる、まあ、それだけ響きも近代的になる・・・
・・・どのキーに転調しても距離感が同じなので、特別な緊張感もなければ安定感もない。常に3つのキー上を浮遊しているような感じを受ける・・・
普通の西洋音楽は、「起立→礼→着席」の「礼」しているときに「はやく着席したくてたまらない気持ち」(参照:導音とドミナント・モーション)みたいな推し進める力(略して推進力)を利用して音楽の物語をつづるわけ。ここでは、それを意図的に完全に逆らって構成している。そのため、つねに「礼」しているような不安定感があり、そこに Jazz のスピードが加わると、階段を一番飛ばしで下ろうとしたら足を踏み外して 4 段飛ばし位で駆け下るような体験ができる。
理屈で感嘆し、理屈抜きでスリリングな名曲。
それ以外は・・・もごもご。「Naima」はきれいなバラードですね。「Mr. P.C.」の軽快さも心地よいです・・・えっと、ちゃんとゆっくり聴きますって。
「Blue Train」
- John Coltrane (ts)
- Lee Morgan (tp)
- Curtis Fuller (tb)
- Kenny Drew (p)
- Paul Chambers (b)
- Philly Joe Jones (d)
'57 年製。
うわ、もしかしてこれ超傑作の類じゃないですか!?
「Giant Steps」のような難解なコードにアドリブを埋め尽くす手法を開発する前、「One Down, One Up: Live at the Half Note」のような怒涛の即興を果てしなく続ける前のコルトレーンの姿。ばきばきのバップである。名手によるリズム態の上でみんな次々とすこぶる機嫌の良いソロを展開する。カーティス・フラーのトランペットが格好いい。この世の幸せである。
ビッグバンドやスウィングじゃなくってモダンな Jazz の入門として、最初にこれに出会っていたかったよと唸ってしまう。だって、本格的な Jazz への入り口が「ビッチェズ・ブリュー(紙ジャケット仕様)」(マイルス・デイビス)の恐るべきサウンドだったから*1。ドプログレからソフト・マシーンやニュークリアスを経由しちゃうと「ビッチェズ・ブリュー」に漂着しちゃうよね?キース・ティペットやジェイミー・ミューアを通過して恐るべき即興の世界に入るよりは幾分か「道の踏み外し度」は低いけれど。
まとめ
クリスチャン・ヴァンデよろしくなんかの啓示を受ける寸前までやってきましたよ!
そんな音楽うんぬんは、しょせんは差異化ゲームプレイですわ。差異化し、メタ視し、そしてより深みのある自己嫌悪のポーズを競い合うゲーム*2。まあ、ライアーゲームよりはプレイしやすいゲームですよ。。(メタ) ←そう、この段落そのものがソレ。(メタメタ) ←と、あえて解説する様もソレ。(メタメタメタ) ←以下無限後退略
今リスペクトされるというか、デカい顔できるのは狭いジャンルでガチガチに詳しい奴。
http://anond.hatelabo.jp/20070424165834
なんていうから、本当は Jazz に感けてないで、差異化ゲームプレイヤーとしてはプログレを掘り下げるべきなんだろうなあと思ったりする。