2016年6月に聴いた(1):Miles Davis & Robert Glasper/BIGYUKI/Guillermo Klein/森田真奈美/Petit Milady/Ray/Klaus Gesing, Björn Meyer & Samuel Rohrer/小瀬村晶/Deerhoof/Negicco/LOTUS POSITION/Noro
音楽ブログがもう上半期ベストを続々とあげるなか、ようやく6月の前半に追いついてきました。いよいよ男声アルバムが0件になりました。そんなもんよね・・・。さて、本エントリーにはアルバムの内容に関するネタバレが含まれますので、お気をつけ下さい。お気をつけ下さい。二度言った。大事なことだから。
- 【Everything's Beautiful】 Miles Davis & Robert Glasper
- 【Greek Fire】 BIGYUKI ★オススメ★
- 【Los Guachos V】 Guillermo Klein ★オススメ★
- 【Naked Conversation】 森田真奈美
- 【Mille Mercis】 Petit Milady
- 【Little Trip】 Ray
- 【Amiira】 Klaus Gesing, Björn Meyer & Samuel Rohrer
- 【MOMENTARY: Memories of the Beginning】 小瀬村晶
- 【The Magic】 Deerhoof
- 【ティー・フォー・スリー】 Negicco
- 【LOTUS POSITION with 山下洋介】 LOTUS POSITION
- 【Je T'aime】 Noro
第一印象点はだいたい1.0(そっとじ)、2.0(いまいち)、2.5(ふつう)、3.0(よい)、4.0(とてもよい)、4.5(傑作)みたいなフィーリングです。オススメ印はシェフが気まぐれているとお考えください。
【Everything's Beautiful】 Miles Davis & Robert Glasper
Jazz。Miles Davisの名を先に持ってくるあたりがずる賢さみあふれんばかりであるRobert Glasperの最新作であり問題作。問題作というか珍作というか、なぞめいた作品すぎて、グラスパー本人の発言や、その他音楽関係者・ライター等の評価などいろいろ気になりますが、音源だけ聴いて感想を言う主義のブログなので我慢しておきます。
▼Miles Davis - Maiysha
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↑これが↓こうなって
▼Miles Davis, Robert Glasper - Maiysha (So Long) [audio] ft. Erykah Badu
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▼The Ghetto Walk - Miles Davis
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↑これが↓こうなって
▼Miles Davis & Robert Glasper Feat. Bilal - Ghetto Walkin'
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▼Miles Davis - Violet
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↑これが↓こうなって
▼Miles Davis, Robert Glasper - Violets (audio) ft. Phonte
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などなど。主にキャリア後半のメロウな曲が、当時存在しなかったナウなブラックミュージックにがらっと再編されている。よくもこういう渋い曲を選んできたなあと思いつつ、こんな渋い音源まで含めてマイルスを聴きつつ本作を手に取る層はかなり少なめなのでは(インターネットにありがちな俺異端アピール)。また、もしMilesが存命ならこういう路線に傾倒したかもなあ、と説得力がある。じつにおもしろい。むしろ、Maiyshaを始めとして本作の音源をタイムトラベルして当時のマイルスに聞かせてカバーさせたかのようなタイムパラドックス感がある。わんわん。
シャレオツにBGM化された原曲に突如、当時のHancockに匹敵する殺気のこもったピアノが切り込んでくるMilestonesが秀逸。
▼Miles Davis - Milestones
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↑これが↓こうなった!!
※聴いてのお楽しみ!!(Youtubeに音源があがってなかった)
とある曲の中間部分の(ネタバレ回避)、ハーモニカによるNefertitiのテーマからソロも聞き所。
→第一印象:4.1(5点満点)
【Greek Fire】 BIGYUKI ★オススメ★
Jazz。はじめまして。鍵盤奏者BIGYUKIのリーダー作。
このエントリーを書くにあたってCDライナーノーツをちら見するまで日本人だとは知らず、「ビギュキ」みたいに脳内発音していた。正しくはビッグ・ユキだと思われる。で。CDライナーノーツが、ひたすら海外のだれだれと共演したとかだれだれ評価されたとかそういう箔をつけることばかり並び立て、肝心の音楽についてほとんど触れていないのが残念。
それはさておき、中身はとても興味深いシロモノです。HIP HOPインストトラックとしては音楽的すぎて、Jazzとしては構築的過ぎて、汎音楽然としていてとらえどころがない。ロバートグラスバーとて、Jazz側に振れたときはそれこそマイルスバリの緊張感を醸してくるし、HIP HOP側に触れた時はあたかもサンプリング・再構築されたおしゃれなトラックかのような手仕事をする。誰に向けてアピールしているかわかりやすい。本作のような何者でもないような音楽にはいったいどこのどんなとこに需要があるんだ?と首をしげすぎてアタシはdeadした。<アタシはdeadした>は、そういえばFlying Lotusのアルバム【you're dead】もそういう謎に満ち満ちている怪作だったなあというほのめかしのつもりなのだが、ほのめかし下手すぎか!と架空の読者(実在の読者などいない)から苦情が入りました。こういうほのめかしは過去現在未来あちこちにちりばめておりますハッタリ。
白眉なのあh『John Connor』で、今っぽいリズム構造が素敵で今ジャズ化したPink Floyd『On The Run』ともいえなくもなきにしもあらずんば・・・
→第一印象:4.2(5点満点)
【Los Guachos V】 Guillermo Klein ★オススメ★
Jazz。はじめまして。アルゼンチン出身のピアニストGuillermo Kleinのリーダー作。
- Ben Monder - guitar
- Bill McHenry - tenor sax
- Chris Cheek - soprano, tenor & baritone sax
- Diego Urcola - trumpet, trombone
- Fernando Huergo - electric bass
- Guillermo Klein - piano
- Jeff Ballard - drums
- Miguel Zenon - alto sax
- Richard Nant - percussion, trumpet
- Sandro Tomasi - trombone
- Taylor Haskins - trumpet, flugelhorn
リズム・メロディ・ハーモニーすべてが緻密で複雑怪奇だけどおどけた飄々とした雰囲気で楽しげで心躍らされるグルーブ感がある。Henry Cowとかそういうプログレ/ジャズ・ロックを思い出しながら、Henry Cowから40年間人類が積み重ねてきた進歩も含有されさらなる混沌/コントロールを生み出している。プログレとしては一級品だが、Jazzとしてはアドリブ性が低くてやや残念。5+5+5+5+4(24拍)拍子をベースに各バートが絶妙にアクセントが前後したりハーモニーが調和/非調和を大胆に行き来し、6×4(24拍)のクロスリズムまで重ねてくる数学的楽曲『Suite Jazmin: Human Feel Mirror』が傑作。
→第一印象:4.3(5点満点)
【Naked Conversation】 森田真奈美
Jazz。はじめまして。ピアニスト森田真奈美さんのリーダー作。
インスト系J-Popじゃないですけど、たおやめぶりっこ的には女声Jazzミュージシャンは、イケイケな人と、ダメダメな人に明暗きっぱり別れるイメージ。イケイケの四天王が大西順子さん、山中千尋さん、上原ひろみさんの3名であり、狭間美帆さん、桑原あいさんらが残った4席目をうかがっている。いや、大西さんを魔王にして残りの4名を四天王に・・・というはなしはさておいて。
本作はイケイケ側に属する良作。ただ、四天王候補にあがるかどうかといえばもう一歩押しがたりなげ。ではありますが、作編曲もアドリブのテンションもメンバーシップもいい塩梅にまとまっていて安心感が強い作風。ぐねぐねのリズムが快感な『Caravan』と、上原ひろみさんばりの変拍子でゴリ押ししてくる『Left Alone Tonigt』が聞き所。
→第一印象:4.0(5点満点)
【Mille Mercis】 Petit Milady
J-Pop。声優で歌手の悠木碧さんと竹達彩奈さんのデュオユニットプチミレデュのベスト盤。発売は2015年末。CDで買うのはちょっとアレだなあと思って見送っていたら、ついさっきiTunesでみかけたのでぽちったところ。脳内の聞き手には折にふれて語っているけれど、有機酸はやっぱり声を張った歌い声がもっとも魅力的でありますが、プチミレにおいてはたけたつさんと被ってて、いまだに、なんどきいてもどの曲をきいてもどっちがどっちかはっきり区別できないのであります。常にAさんが左、Bさんが右にパンしていると固定されていればよいのだけど、そうでもなさそう?
個別点数式(10点傑作/3点かなりいい/1点なかなかよい/0点よい:ふつう:よくない:ゲロマズ)でいえば、イカの曲に点数を授与したい『azurite』(3点)、『スキ キライ キライ 大スキ』(1点)、『箱庭のヒーロー』(1点)
▼petit milady - azurite
www.youtube.com
▼petit milady (プチミレディ) - スキ キライ キライ 大スキ♡ (from 2nd LIVE@有明コロシアム) #プチミレ
www.youtube.com
▼petit milady(プチミレディ) - 「箱庭のヒーロー」
www.youtube.com
珍曲枠は『Ma Chérie』
どうしてこんなにも『ライオン』なのか?
→第一印象:3.9(5点満点)
[asin:B018VML3HC:detail]
https://itunes.apple.com/jp/album/mille-mercis/id1064348385?uo=4&at=10lqt2
【Little Trip】 Ray
J-Pop。アニソン系シンガーRayたその3rdアルバム。
Rayさんのシンガーとしての懐の深さというのに思いを巡らすことがあって、曲風も音域も編曲も渋めに寄せた歌が映えるんじゃないかと。その真偽は、ファンにとってはライブではアコースティックセッションなどがあって周知の事実なのかもしれないけれど、リリースされた音源だけしか聞いていない当ブログでは知る由もなく残念に思っていたところ。
主旋律がたくさんオーバーダブ&加工されがちで細部が聞こえないような音作りだった過去から、この3作目にして過保護に箱入られていた肉声的な曲が大きく解禁されなみだちょちょであります。過去の名残が強いのは『a-gain』くらいでよかった。<Rayタソのファンは身体が目当て>とは誰のセリフかしらないが、その手の御仁は初回版を購入されることをおすすめします(わたしだ)。
個別採点方式(10点:傑作/3点:かなりいい/1点:なかなかいい/0点:よい、ふつう、よくない、ボッシュート)で唯一点数付きなのは『初めてガールズ!』。底抜けな明るさと謎の不気味さとさりげに気に必殺を決める楽器隊が同居する怪作です(3点)。
→第一印象:3.4(5点満点)
【Amiira】 Klaus Gesing, Björn Meyer & Samuel Rohrer
Jazz。はじめまして。
フリップ師がKing Crimson projeKctシリーズでお茶を濁していた音楽の、濁されてない茶、一番煎じ的な茶、それが本作。抽象度の高いインプロが繰り広げられます。『Flimmer』はprojeKct+ライヒのような趣もある。
→第一印象:3.3(5点満点)
【MOMENTARY: Memories of the Beginning】 小瀬村晶
J-Pop。はじめまして。ピアノ中心のアコースティック楽曲。アコースティックだけれどおそらく打ち込みによるものなので、当ブログとしての分類はテクノ。テクノテクノしていない音を使っているDAISHI DANCE。高品質に無害な曲がずらり。ここまではネガティブな物言いだけど、2曲め『はじまりの記憶』にしてやなぎなぎさんをオファーし自らの楽曲を歌ってもらえるって圧倒的勝ち組っ……!!うらやましすぎる……!!!!この曲の存在が本アルバムをポジティブな存在に反転させている。楽曲個別点数方式(10点:名曲/3点:かなりよい/1点:なかなかよい/0点:よい、ふつう、よくない、ダイシ)で1点。
→第一印象:2.0(5点満点)
【The Magic】 Deerhoof
Rock。はじめまして。Apple Musicの新着をチェックしていてひっかかった作品。The Pop Groupの系譜でしょうか。ダモ鈴木的ポジションに日本語(日本<人>であるかは判断できず)女声を据え、実験的でめちゃくちゃではちゃめちゃだけど破滅的ではなく理性的なポップ/パンク音楽博覧会。最小限の音で最大限の珍作を表現する大胆さに驚かされます。
→第一印象:3.8(5点満点)
【ティー・フォー・スリー】 Negicco
J-Pop。名前は知っていたけれどアルバムを聞くのははじめましてなアイドルグループNegiccoの新作。一般的なアイドル音楽に特徴的なアッパーアッパラパみも押し付けがましみも奇をてらいすみ(奇は好物ですが、奇なら奇でアルバムぶっ通してほしい)もすべて抑制されてしっとり落ち着いたトーンのディスコ/テクノ/ポップスで聴いてて疲れず、Perfumeの新作と肩をぶつける良作。擬似フォーク系プログレに聞こえなくもない『土曜の夜は』がお好み。
→第一印象:3.6(5点満点)
https://itunes.apple.com/jp/album/ti-fo-suri/id1109061611?uo=4&at=10lqt2
【LOTUS POSITION with 山下洋介】 LOTUS POSITION
Jazz。
19世紀末 アメリカ南部で誕生した黒人音楽 JAZZ。その自由な表現方法はあらゆる民族性を取り込みながら世界中を旅し、やがてヨーロッパや南米のJAZZ が生まれた。その風は日本にも辿り着き、多くのジャズミュージシャンを輩出した。2012年 尺八奏者 小濱明人とドラマー堀越 彰がNew YorkでスタートさせたLOTUS POSITION は、日本の古典音楽や様式美を強く意識したユニットである。
http://www1.ttcn.ne.jp/play-ground/official/images/unit_lotusposition/cd_flyer2.pdf
せやな!!
日本の伝統音楽は、間合いと気合でよーおっとやるタイプの音楽なので、黒人のそれのような定形・定速のビートをベースにしたJazzとの相性は最悪かと思ったり、いや、フリーインプロビゼーションくらい先鋭化したJazzはむしろ気合と間合いの世界なのではと思い出したり。そういう意味で、うっかりビートやコードが生まれてしまったテイクはダサみがあり、気合と間合いで集中が続いている場面はさすがのさつばつさで良い感じ。
→第一印象:2.0(5点満点)