怪奇骨董たおやめぶりっこ

ますらおぶりに憧れるブログ。涙がちょちょぎれちゃう。だって怪奇骨董たおやめぶりっこだもの。

「Life in Leipzig」Ketil Bjornstad - Terje Rypdal/「The Sea」Ketil Bjornstad

http://d.hatena.ne.jp/fractured/20080410/1207853439以来、彼らの関連作品を大人買いも甚だしく十枚二十枚と聴きまくりましたが、ジャズ、ロック、クラシック、それぞれの愛好者にとって最もアピールする傑作はこれだ!という2作品。

  1. 「Life in Leipzig」Ketil Bjornstad - Terje Rypdal
  2. 「The Sea」Ketil Bjornstad

「Life in Leipzig」Ketil Bjornstad - Terje Rypdal

ECM レーベルを中心に数々競演しているノルウェーのピアニスト、ケティル・ビヨルンスタとテリエ・リピダルのデュオによるライブ録音。2008年製品。第一印象★★★★★

  1. The Sea V
  2. The Pleasure Is Mine, I'm Sure
  3. The Sea II
  4. Glotation And Surroundings
  5. Easy Now
  6. Notturno (Fragment)
  7. Alai's Room
  8. By The Fjord
  9. The Sea IX
  10. Ke Manfred/Fran Reisen
  11. The Return Of Per Ulv

ジャズに分類したけど別にスウィングするわけじゃなくて、イージーリスニングというほどイージーじゃなくって、ジャズロックというほどロックでもなくて、セミクラシックというほど予定調和じゃなくって、まあ「音楽」ですよね。

ド甘でド渋な熱情をめらめらと噴き出すピアノと、沸々と内に秘めたロック魂を抑圧&昇華して空間を演出するエレキギターの名人芸。ギターはこれだけ音を激しく歪ませながらよくぞこれだけ繊細な音を紡ぎ出すものだ。水と油じゃないかと思われるピアノとギターがここまで調和し会話できるものなのかと驚きを隠せないから隠さない。

The Sea V / Ketil Bjornstad - Terje Rypdal

ビヨルンスタにしては希有な邪悪なインプロから待ちきれないとばかりにリピダル切り込んでくるオープニング「The Sea V」からぐっと引き込まれる。そこから4曲目「Glotation And Surroundings」まで山あり谷あり激情あり静謐ありしながら終止甘美な見事なメドレー。ここまでで完全に打ちのめされよう。

5曲目「Easy Now」〜「By The Fjord」「The Sea IX」はそれぞれの叙情パート。リピダルのバラード「Easy Now」、ビヨルンスタの幻想性をアピールする「Notturno (Fragment)」(グリーグ「叙情小曲集」より「夜想曲」)〜「Alai's Room」の短い演奏を経て、「By The Fjord」の後半から「The Sea IX」でまた2人が甘い合体を果たす。

うっすらロバート・フリップ師を思い出すギターの自己アンサンブル(邪悪なフリップ師とちがって、しっかり協和しているけれど)「Le Manfred / Foran Peisen」を間に挟んで、最後は「Do You Close Your Eyes」を歌うロニー・ジェイムス・ディオ*1のごとく骨太なポップチューン「The Return Of Per Ulv」でとても明るい家族計画な気分で締めくくる。

なんて完璧なセットリスト。

「The Sea」Ketil Bjornstad

もういっちょ。先の2人に、アメリカ出身のチェリストのデイヴィッド・ダーリングとノルウェー出身のドラマーのヨン・クリステンセンを加えたカルテットによる作品。'95 年製。第一印象★★★★★

Sea

Sea

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  • Sea, I 〜 Sea, Xii

「The Sea」と名付けられた12曲の組曲。先の「Life in Leipzig」にも3曲(V, II, IX)が取り上げられ、ライブの「甘いパート」を演出していました。そちらでは、甘すぎてじゃっかん胃にもたれる感じもしましたが、こちらは4人による落ち着いたまさに北欧の叙情性と心地よい重々しさをたたえた作品となっております。

The Sea II / Ketil Bjornstad

優しさと寂しさと嬉しさと悲しさを巧みに演出して全体を支えるピアノ、口数は少なくても豊かな低〜中有音域で暖かさ温もりを与えるチェロ、時に空間を包み時に奔放なソロを弾きときにノイズを供給する変幻自在のギター、ええとええと一撃一撃の価値が高いドラムのインプロヴィゼーション・・・と海の見せるさまざまな表情を思い描かせるに十分なアンサンブル。

「II」「VI」「XI」のような全員が合体して広大な海を描くような盛り上がりは言うに及ばず、各メンバーが適材適所最高の組み合わせで音楽を形成してゆくのもよい。例えば、「IV」でドラムとチェロのデュオが即興性の高いプレイを繰り広げる緊張感はたまらないものがある。

そんな具合で一貫して具合の良い美しさが支配する傑作。その一貫さが逆に苦手な人も多いのかもねえ。

まとめ

というわけでKetil Bjornstad - Terje Rypdal関連を2枚。こういう風に、素直な曲を素直に演奏するってのは、プログレやモダン〜ジャズなどひねくれた世界の音楽に入り浸っているとかえって新鮮。しかも単に素直なだけじゃあつまらんイージーリスニングになってしまうのだけど、そこにかけがえのない個性をぶちこむのが匠の世界、特にリピダルの時々狂ってるじゃないかというギターが一筋縄ではいかない高みに音楽をもっていっているところが素晴らしい。