怪奇骨董たおやめぶりっこ

ますらおぶりに憧れるブログ。涙がちょちょぎれちゃう。だって怪奇骨董たおやめぶりっこだもの。

「狼と香辛料 O.S.T. 狼と旅の音楽」吉野裕司 他

このサウンドトラックを聴くとナニがもげるぞ!

テレビ埼玉などでやっていたアニメ「狼と香辛料」のオリジナルサウンドトラック。2008年、日本製。サントラでは「かなり大当たり」の一作。第一印象★★★★

[asin:B00120VGZA:detail]

アニメ/ゲーム音楽の魅力(超要約)

率直に言って、アニメ/ゲームの音楽は大好きです。http://d.hatena.ne.jp/fractured/20080317/1205773706でうっかり J-Pop 一般論をおしゃべりした勢いで、「ある種の音楽(≒サウンドトラック)のどこか好きか」ってぺちゃくちゃエレフェントトークしたいのですが自重します。要約すると結局は J-Pop の魅力と同じで、古今東西さまざまな音楽が消化吸収換骨奪胎された叡智が結集しているところがよい。あと、プログレ人脈が深く関わっているのもね。

というわけで「狼と香辛料」作品に焦点を絞りましょう。こいつをすごくおおざっぱに言うと、ケルティッシュとでも言うのかな?そういう民族音楽的な曲と、弦楽隊による近代的な曲の両極端を往復するアルバム。

民族げ

「商人と狼と、旅の荷馬車」

http://www.studio-ram.com/disc/71M4.mp3:sound

http://www.studio-ram.com/disc.html

一聴にして「わー民族げだー」と分かるみんぞくげ。でも「民族音楽げ」であって「民族音楽」そのものではないあたりが「ある種の音楽」魅力。クラムホルンなどの中世ヨーロッパの古楽器と、アフリカ民族音楽の打楽器、近代ヴァイオリン族などが一緒くたになってアンサンブルしている。ヨーロッパとアフリカが出会うのは中世からしたら遙か未来の話。

そんな考証うんぬんは関係なく最適な組み合わせで描き出される「民族げ」な音楽。ちまたにもいっぱいありますが、特に「ある種の音楽」の世界では洗練されていると思われるわけです。一種の高度に偽装された民族といいますかいわないんですか。ぱっと思い浮かぶ古典としてはイーアルカンフーとか。そんな中国民族音楽ねーよ、でもそれっぽい、みたいな。パイオニアはハリウッド映画だとも耳にしたことがありますが。

そんなこんなで異形の民族なる音楽が究極に達しているのがこちら。

これはイノセンスの曲らしいのだけど


歌ってるのが「西田和枝社中」という人達らしい。
少し前にCMでやってた東芝HDDVDのCMが好きでそれもこの人達なんだと。

youtube探したけどなかった。
これも日本の民謡なの?似た感じなの知ってたら教えてほしい

>>138
これは凄い!
ブルガリアの女声合唱がベース?かと思います
日本の民族音楽にはここまで発達した女声合唱はないはずです。
打楽器とメリスマ(音が細かく上下に揺れる歌い方)は日本風。面白いですねぇ。

参考までにブルガリアの合唱
http://jp.youtube.com/watch?v=s2TmmCJcc_g

やる夫で学ぶ民族音楽【働くモノニュース : 人生VIP職人ブログwww】


イノセンスのオープニング「傀儡謡-怨恨みて散る」。衝撃的([asin:B000197M56:title])。

弦楽近代げ

「変化」

http://www.studio-ram.com/disc/75M12A.mp3:sound

http://www.studio-ram.com/disc.html

いいですねえ。一気に時代を下った感じがします。響きがモダンでオシャレ。この響きが生まれたのがワーグナーの時代なのかラヴェルの時代なのかはたまたなのか全然分かりませんが、モーツァルトにはなくって久石譲にはある響きです。

危機的な場面で使われる「ざわざわする」はミニマルミュージックですよね。きりきりとしたヴァイオリンの響きが煽る不安、文字通りざわざわと周りで波打つ他の弦楽。「太陽と旋律」のごときリフで迫り来る「聡き人たち」のずれたアクセントの掛け合いが素直にかっこよい。あとは「はしる」のずるいヴァイオリンソロがたまらない。

個人的には、前者の民族げより弦楽アンサンブル主体の後者のほうがずっと好き。後者の豊かな暖かく響きに

その他

主題歌「旅の途中」がいい曲。フル版とTVサイズ版と2種類収録されているのはなぜだろうと思ったら、それぞれの印象が全然違っていて納得。

狼と香辛料 OP - 清浦夏実 「旅の途中」

これがTVサイズ。フル版ではまず派手なイントロに驚かされる。フル版は派手なのだ。もちろんTVサイズはフルの抜粋なのだけど、フル版のイントロやブリッジ(Dメロ/大サビ)の大仰な展開があるとなしとでは全体の印象がこんなにも変わるものなのだなあと感心しました。

▼リンゴ日和〜The Wolf Whistling Song


総論

ベタではありますがそのベタっぷりにベタ惚れた1曲「強い風が吹いても」を聴きながら。

というふうに「クラシック」なところを巧妙に迂回して*1中世と近代で挟み撃ちする具合がとても心地よいアルバム。商業が発展し都市が活気づく一方で、古い伝統を捨て変化する時代への恐れや、教会権力が落とす「魔女」「異端」などの暗い影、森の狼、強盗を働く傭兵、商売の破綻、などなどさまざまな不安をかかえる世界を描いている点に好感を持った。ケルティッシュな音楽がお好みで、なによりも弦楽が大好きな人に強くオススメな一作。

*1:バロックポリフォニーな趣をみせる「ひとりぼっちの夢」なんかがとても際だつ