怪奇骨董たおやめぶりっこ

ますらおぶりに憧れるブログ。涙がちょちょぎれちゃう。だって怪奇骨董たおやめぶりっこだもの。

「MUSICAL FROM CHAOS」DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN

今日聴いた音楽。新入荷。「ジェーポップ強化計画」17枚目。第一印象★★★★」。2003年、日本製。

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あれ、プレイリストにマイルス入れてたっけな。ん、ああこの前買った菊地成孔関連のアルバムかあ。それにしてもマイルスっぽいなあ。と思ったらほんとにマイルスの曲でしたというオチ。夢オチ。

さて、今回DCPRGの「ミュージカル・フロム・カオス」と名づけられた2枚組を入手したわけですが、DCPRGを聴くのは今回初なので簡単に調べ物をしておきます。

音楽性

主宰者菊地成孔による解説(PELISSE DCPRG histoire)がとても適切だったのでさらっと引用します。(メンバー構成などはDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN - Wikipedia参照)

現在これからDCPRGを経験しようと言う方々に対して、一言で説明するな らば「ジャズ、特に70年代マイルスと、アフロビート、特にフェラクティ以後を脱構 築させた様なダンス・ミュージックで、3時間ぐらいライブをする」といった感じで しょうか。

いまや当たり前になった踊るJazzの野心的な新党さきがけのような存在でしょうか。いや、2001年結成というのはさきがけにしては遅すぎるか。まあいいか。

音楽構造に限れば、整数的な奇数拍子、整数的な複合拍子、非整数的な複合拍子。 といった、20世紀までは「ダンス・ミュージックには向かない」とされていたリズム 構造を使って、原始的なダンス衝動を誘発する。という、リズム・ルネサンス、そして、シンプライズされないとダンスには使えないと言われていたジャズ・ミュージッ クによるダンスホール・ジャズ・レコンキスタという側面があります。

プログレ種の音楽愛好家にはステキすぎる解説です。菊地氏も分かっていて狙っているはず。「リズムの訛り」をテーマにしたTipographicaの解散によって荒野に投げ出された氏が、一人立ちする上でうねりあげたコンセプトはかくのごとくだったのです。

ディスク1 CATCH22

「CATCH22」というテーマによる集団即興のいろいろなテイク。うわさにたがわぬマイルスの熱いマナザシ。「Bitches Brew」の世界です。一瞬Soft Machineの「Spaced」(asin:B000008RV7)みたいなどろっとした瞬間もあるものの、全体的にはのりっとした呪詛ジャム。

この種の作品として、われわれは既にキング・クリムゾンKing Crimson)の「THRaKaTTaK」というアイテムで修行しておりますから、どんな即興だってどんとこいなのです。CATCH22なんて、ほんとにキャッチーで生ぬるいわっ!

BITCHES BREW

BITCHES BREW

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参考作品。'69年米国製。エレクトリック期の代表作。Rockの世界でクリムゾンとレッド・ツェッペリンLed Zeppelin)がデビューし、Jazzではマイルスが「Bitches Brew」を発表した'69年という時代の言いようのない熱さを感じる傑作。

ディスク2 Iron Report Menu

こちらは無難なセットリスト構成。「原始的なダンスを誘発する」「ダンス・ミュージック」というコンセプトに忠実な、より明快なビックバンド音楽。マイルスの原作よりきびっと引き締まったアレンジになった「Spanish Key」や、バラード「Stain Alive」などを含む。

個人的には、紆余曲折しながら印象的なクライマックスへと到達する「Circle/Line〜」を白眉と感じる。なぜならば、150分余の作品で唯一「日本人的なポップ感覚」を感じさせる瞬間があるから。それは、演歌や軍歌や祭囃子ではなくって、日本人がつくるPop固有の音楽感覚。日本のヒットチャートと欧米のそれ、日本のヒットチャートと特定アジアやその他アジア諸国のそれを比べてみれば、日本的Popの独特さが実感できよう。トインビー〜ハンチントンの文明史観による「日本文明」の存在を音楽的な側面から体感することができる重要なトラックだ。

これで「Circle/Line〜」が欧米のカバー曲だったらド笑いものだね。

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'75年米国製。あえてマイルスから参考作品をもってくるとしたらこれかな。「Bitches Brew」と対比してより明快であるという意味で。

後記

菊地成孔今堀恒雄と比べてしまうとどうしても凡庸なのかなあと思ってしまう節がある。節があっても手練た猛者たちが束になってかかっているわけだからそのクオリテーは一流である。一流だけに、よけい何かがなんとなく惜しまれる惜しい感覚がふぬぐり去れないのだ。私がTipoの幻影に蝕まれているのかもしれない。そこはもっといろいろ聴いてから改めて考え直したいと思う。

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