2015年7月後半に聴いた:Tigran Hamasyan/山中千尋/Michael Brecker/Mouse on the Keys/I love you orchestra/浮遊スル猫/岩崎太整/Dave Weckl/Amir ElSaffar Two Rivers Ensembles/Miles Davis/YES/内田彩/赤い月
7月後半はやや多め。豊作気味。8月は逆に少なめになります。今回から、Apple Musicで配信されているやつはリンクをはります。現時点ではみんなお試し期間無料ででしょうから無料で聞けますよお得ですよー。
オススメ印はシェフが気まぐれているとお考えください。
第一印象点はだいたい1.0(そっとじ)、2.0(いまいち)、2.5(ふつう)、3.0(よい)、4.0(とてもよい)、4.5(傑作)みたいなフィーリングです。
- 【Mockroot】 Tigran Hamasyan ★傑作★
- 【シンコペーション・ハザード】 山中千尋
- 【Pilgrimage】 Michael Brecker
- 【The Flowers of Romance】 Mouse on the Keys ★おすすめ★
- 【Stop Your Bitching】 I love you orchestra
- 【梦を解く】 浮遊スル猫
- 【TVアニメ「血界戦線」オリジナルサウンドトラック】 岩崎太整他V.A.
- 【The Dave Weckl Acoustic Band -Featuring Makoto Ozone, Tom Kennedy, Gary Meek-】 Dave Weckl
- 【Crisis】 Amir ElSaffar Two Rivers Ensembles ★おすすめ★
- 【Miles Davis at Newport: 1955-1975: The Bootleg Series, Vol. 4】 Miles Davis
- 【Like It Is - Yes at the Mesa Arts Center】 YES
- 【Blooming!】 内田彩 ★おすすめ★
- 【HEAR YOU】 Toe
- 【赤い月】 赤い月
- 【東京 1/3650】 南條愛乃
【Mockroot】 Tigran Hamasyan
Jazz。アルメニアのピアニストTigran Hamasyanのリーダー作最新作。確か春頃に、マックの女子高生が「ティグランハマシアンの最新作まじパねーよな」「まじアゲぽよっ火ファイヤー即ハボドラゲナイ」などと会話しているのを聞いてAmazon MusicやiTunes Storeを検索してもみつからなかったので、悪質な拡散希望デマ炎上商法かよと東京で消耗したのだけど。やっぱり出ていたのですね。
変拍子、ポリリズム、展開、尺、アドリブプレイ、エスニックさ、コーラスワーク、アコースティック/エレクトリックありとあらゆるプログレ厨に必要な要素がてんこ盛り。ロバートグラスパーにもマークジュリアナにもビジェイアイヤーにもアビシャイコーエンにもシャイマエストロにもいまいち萌えきれなかったモヤモヤが解消されるような、ロバートグラスパーとマークジュリアナとビジェイアイヤーとアビシャイコーエンとシャイマエストロの萌ポイントを集めたような怪作。
→第一印象:4.9(5点満点)
【シンコペーション・ハザード】 山中千尋
Jazz。ピアニスト山中千尋の最新作。アルバムタイトルからしてもう中二心がくすぐられますね。なんといっても、シンコペーションがハザードである。「〜Rag」という曲が半数を占めるが、典型的なラグタイムの音形が出てくるのは少数派で、なんかわからないけどなにか新しいラグのかたちを提唱しているんじゃああないかと察するが理解できずなミステリアスガールがウィーゲッチューであります。
→第一印象:4.3(5点満点)
https://itunes.apple.com/jp/album/syncopation-hazard/id1012251110?uo=4&at=10lqt2
【Pilgrimage】 Michael Brecker
Jazz。サックス奏者Michael Breckerのリーダー作・2007年製。白血病の闘病明けに録音され、その数カ月後に亡くなる。遺作。
Michael Breckerさんといえば、Brecker brothersの諸作はちょいちょい手を出しつつも、そもそもフュージョンはあまり好きじゃないので聞き流しがちに過ごしていました。で、今回、純Jazz的なリーダー作は初めて聴いたところ。
今までなんとなく聞いていなかったことを後悔するような快作。
- Michael Brecker – tenor saxophone, EWI
- Pat Metheny – guitars, guitar synth
- Herbie Hancock – piano (Tracks 1, 5, 8, 9)
- Brad Mehldau – piano (Tracks 2, 3, 4, 6, 7)
- John Patitucci – double bass
- Jack DeJohnette – drums
といった新旧スーパースター達で固められている。私の雑な音楽観でいうと、「モダンジャズ」と「今ジャズ」の中間点あたりから派生した(それを「コンテンポラリー」というのかしら)音楽。で、このカテゴリーの音楽は、激しい曲はぐいぐい聞ける一方でスローになるとトタンに眠くなるという傾向がある。けれど、本作は『When Can I Kiss You Again?』といったバラード曲でさえ、神経が細部に引きこまれていく魅力がある。
→第一印象:4.7(5点満点)
https://itunes.apple.com/jp/album/pilgrimage/id254558007?uo=4&at=10lqt2
【The Flowers of Romance】 Mouse on the Keys
J-Pop。インストバンドMouse on the Keysの第2作。
前作を聞き直さずに記憶だけで言っちゃいますが、前作は終始ガンガン系だったような。その点、本作は前作を継承した「サービス」は序盤にとどまっており、以降はやや思索的な流れとなっている。もっとガンガン来いよ!と一瞬思うのですが、なんどか聞いていると静かながらも高い緊張感とバリエーションがなにげに豊かで、これが正解だと思えてきます。サービスシーンは最後まで出さずに抑制が効いたまま終わります。
→第一印象:4.2(5点満点)
【Stop Your Bitching】 I love you orchestra
J-Pop。はじめまして。インストバンドの1stアルバム。
ツイン・ドラム、ツイン・ギター、キーボード、そしてベースという6人編成
だそうで。全編バカバカしいほどの勢いがあり、リズムも時にテクニカルで飽きさせない。ZAZEN BOYSが(スタジオ・アルバム作品では)もうやらなくなってしまった路線、収斂進化的にKing Crimsonでルーツ的にmassacre的…は言い過ぎた。
→第一印象:3.9(5点満点)
【梦を解く】 浮遊スル猫
J-Pop。はじめまして。3人組ロックバンド浮遊スル猫の新作。3人編成とは思えない骨太なサウンドでよいです。・・・それをオーバーダブという。これはアクセントに1拍抜いで5拍子になるやつや・・・まだか・・・まだか・・・まだなのか・・・と焦らされて最後まで終わってしまったドエスな楽曲、『1か0か』が印象的。
→第一印象:3.6(5点満点)
【TVアニメ「血界戦線」オリジナルサウンドトラック】 岩崎太整他V.A.
サントラ。いまだ最終話は配信されず、いったいどうなってしまったのだろうか。1枚目はインスト、2枚めはボーカル曲(外国語なので安心)でまとめられた2枚組。無国籍多国籍さがよくでている。ボーカル曲類は、劇中では演出効果として心を動かされるものであるけれど、音楽だけ取り出されてあらためて聴くとそうでもないかな感は否めないのはやむを得ないところ。
→第一印象:3.4(5点満点)
【The Dave Weckl Acoustic Band -Featuring Makoto Ozone, Tom Kennedy, Gary Meek-】 Dave Weckl
Jazz。はじめまして。JazzドラマーDave Wecklのリーダー作。オーソドックスなアコースティックJazzで、「何ら問題ない」クオリティ。中南米風や、若干フュージョンっぽくなる場面は私にはややマイナス。
- Dave Weckl (drums),
- Tom Kennedy (bass),
- Gary Meek (sax),
- Makoto Ozone (piano).
→第一印象:3.7(5点満点)
【Crisis】 Amir ElSaffar Two Rivers Ensemble
Jazz。初めまして。トランペット、サントゥール奏者、Amir ElSaffarのリーダー作。
- Amir ElSaffar(tp, vo, santur)
- Carlo DeRosa(b)
- Nasheet Waits(ds)
- Ole Mathisen(ts, ss)
- Tareq Abboushi(buzuq)
- Zafer Tawil(oud, per)
楽器編成も中身も、ざ・中東Jazz。Area(イタリアのプログレ/JazzRockバンド)の中東版といったおもむき、とプログレ厨むけの喩え話でしっくりきました。スウィング、ビバップなアンサンブルはややミミタコで飽きつつありますが、エスニックなものはまだまだ聞き慣れないので新鮮です。小難しさがないのがいい。で、各奏者も現代的なJazzよりから伝統音楽よりまでグラデーション豊かでよいものです。長らく愛聴できるひと品。
→第一印象:4.2(5点満点)
[asin:B011QPY2ZG:detail]
https://itunes.apple.com/jp/album/crisis/id1017738375?uo=4&at=10lqt2
【Miles Davis at Newport: 1955-1975: The Bootleg Series, Vol. 4】 Miles Davis
Jazz。ニューポート・ジャズ・フェスティバルでのマイルス・デイビスの演奏を集めた4枚組。変遷は以下のとおり。
- July 17, 1955: Newport Jazz Festival, Newport, RI
- Miles Davis, trumpet;
- Zoot Sims, tenor saxophone;
- Gerry Mulligan, baritone saxophone;
- Thelonious Monk, piano;
- Percy Heath, bass;
- Connie Kay, drums.
- July 3, 1958: Newport Jazz Festival, Newport, RI
- Miles Davis, trumpet;
- Cannonball Adderley, alto saxophone; John
- Coltrane, tenor saxophone;
- Bill Evans, piano;
- Paul Chambers, bass;
- Jimmy Cobb, drums.
- July 4, 1966: Newport Jazz Festival, Newport, RI
- Miles Davis, trumpet;
- Wayne Shorter, tenor saxophone;
- Herbie Hancock, piano;
- Ron Carter, bass;
- Tony Williams, drums.
- July 2, 1967: Newport Jazz Festival, Newport, RI
- Miles Davis, trumpet;
- Chick Corea, electric piano;
- Dave Holland, bass;
- Jack DeJohnette, drums.
- July 5, 1969: Newport Jazz Festival, Newport, RI
- Miles Davis, trumpet, organ;
- Dave Liebman, soprano saxophone, tenor saxophone, flute;
- Pete Cosey, guitar, percussion;
- Reggie Lucas, guitar;
- Michael Henderson, electric bass;
- Al Foster, drums;
- James Mtume Forman, percussion.
素人が雑なことを言ってしまいますが、'55年や'58年フォームの演奏は、もう研究&カリキュラム化しつくされ、アマチュアのJazz演奏家も十分プレイできる(そして一流芸能人ではないわたしには'50年代の名人芸と聞き分けられない)といっても過言ではないのだけど、'66年に入ると別次元に突入する。いきなり今の現在に至るまで究極の領域に鎮座する音に一変する。近年だとDave Liebman, Richie Beirach, Ron McClure & Billy Hartの【Quest - Testament - Live in Stockholm 2012】(2014年よかったアルバム:Jazz(海外勢)編 - 怪奇骨董たおやめぶりっこ)などがこの領域に挑戦している。それは長く続かず、'67年、'69年にはまた別の路線を突っ走っていくのだけど、それは音源を聞いてのお楽しみ。あるいはマイルスの歩みをググってみてください。
→第一印象:4.0(5点満点)
【Like It Is - Yes at the Mesa Arts Center】 YES
プログレ。英国老舗プログレバンドYesのライブアルバム。12 August 2014、the Mesa Arts Center in Mesaでのライブ音源。【危機】(Close to the Edge/'72)と【こわれもの】(Fragile/'71)の再現ライブ。
参加メンバーは・・・いまからググります。
- Jon Davison – lead vocals, acoustic guitar, percussion, keyboards
- Steve Howe – electric and acoustic guitars, backing vocals
- Chris Squire – bass guitar, backing vocals, harmonica
- Geoff Downes – keyboards
- Alan White – drums
ああなるほどキーボードプレイがちょっと独特だなあと思っていたらRick WakemanではなくGeoff Downesでした。27 June 2015に亡くなったChris Squireとしては最後のYes名義の音源でしょうか。
Yesは後期Beatlesタイプといいますか、スタジオ・アルバムは編集作業(切り貼り・オバーダブ等)で音楽を作り上げるタイプなので、原理的にライブで再現をしようとすると必ず情報が落ちるなり劣化するパティーン。逆のタイプはKing CrimsonとかMAGMAとかで、スタジオ・アルバムはある時点でのデモ音源に過ぎず、ライブを重ねてゲンバで真価を発揮するパテーン。といわけで期待はできないYesですが、本作は意外とうまくやってる。
→第一印象:3.6(5点満点)
https://itunes.apple.com/jp/album/like-it-is-yes-at-mesa-arts/id998462189?uo=4&at=10lqt2Yes未経験の方は、ぜひとも原典を。あっぽーみゅーじっく加入者であれば買わずとも聞けますし。
https://itun.es/jp/Oyeoqitun.es
https://itun.es/jp/roeoqitun.es
【Blooming!】 内田彩
声優で歌手の内田彩さんの新作。前作【アップルミント】がほとんど印象に残っていなかったため、ほとんど期待はしていなかったが真逆の結果。曲、編曲ともども、まるで参加したクリエーター陣がわたし好みに一新されたような相性の良さ。びっくり。三森すずこさんの直近作とまでいかないまでも。『妄想ストーリーテラー』が白眉。プログレ厨的にはこの曲を30分引っ張ってもらってアルバム半分占めてもいいのよ、そうなった場合は・・・とちょっと妄想が捗ります。
→第一印象:3.8(5点満点)
[asin:B010X8K8PK:detail]
https://itunes.apple.com/jp/album/blooming!/id1015426846?uo=4&at=10lqt2
【HEAR YOU】 Toe
J-Pop。日本のインスト系バンドToeの最新作。アルバム【the book about my idle plot on a vague anxiety】をして、私にポストロックなる、'80年代King Crimsonの収斂進化のようなロックのサブジャンルがあることを知らしめてくれたありがたきバンド、Toeの最新作。
普段インストをメインに活動しているバンドがさまざまなゲストボーカリストを招いてやってみました系アルバムは下痢が止まらない作品になりがちだったり、普段インストをメインに活動しているバンドがボーカル曲をアレンジしてみた系アルバムは腑抜けたカラオケみたいな作品になりがちだったり、普段インストをメインに活動していて普段が腑抜けたカラオケみたいな音楽のバンドがボーカルを招くとやっと完成形になったねと安堵しつつも通常運転に戻ったらやっぱり腑抜けたカラオケみたいな作品だったりと、普段インストをメインに活動しているバンドがボーカルに絡んだ変化を模索するとたいていクソが生まれる現象があります。
その点、本作は断固として汚物ではありません。
→第一印象:2.1(5点満点)
【赤い月】 赤い月
日本のロックバンド、赤い月のアルバム。赤い公園ではなく赤い月です。同じ赤だけれど、公園と月じゃ大違い。「世界最大の公園」でぐぐればきっと何か出てくるだろうけど、たぶん月のほうが桁違いに広い。しかもそれは表面積の比較。月は月全体の体積を持っている。体積・質量を基準に比較すれば赤い月の圧勝である。
→第一印象:3.0(5点満点)