DMGのKing Crimsonライブ音源を聴く('81, '84, 2008)
シャチクが続いた反動で、ついかっとなって、ついにDMG(Discipline Global Mobile)でお買い物をしちゃったよ、という顛末。今までは、「King Crimson Collector's Club」というシリーズで日本版CDが出まで待って買っていたもの。毎回興味深い内容のブックレットがついてくるから。昨今、すっかりそういう動きもなくなってしまったのでしゃーないので直接音源を買いますか、という背景。というわけで直近にリリースされた'84年、'81年の音源+新ラインナップのライブを聴いてしました。
King Crimson May 30, 1984 in Vancouver. 30, 1984
→http://www.dgmlive.com/archive.htm?artist=6&show=552
1984/5/30録音。「King Crimson 1984 tour of America」の初日。このツアーの最終日1984/7/11は公式録音され、《Absent Lovers》としてリリースされている、という認識でよろしかってでしょうか?
《Absent Lovers》は、King Crimsonのライブ音源ベスト5本の指に入るくらいお気に入りのライブですので、その数ヶ月前ライブである本作も注目であります。セットリストは「Absent Lovers」公演とほぼ同一。『Red』が演奏されない代わりに『Frame by Frame』が前倒しで入っていて、全体として1曲少ないだけ。
- やっぱり冒頭の『Entry Of The Crims』→『太陽と戦慄 パート3』→『Thela Hun Ginjeet』という流れが鳥肌物。これ発明したの偉い。戦慄3からThela Hun Ginjeetのつながりがちょっと雑だけどww。
- '82年スタジオバージョン、'82年ライブバージョン、'84年ライブバージョンと変化を続けている『Waiting Man』はやっぱり最終形態の盛り上がり方が異常。観客もドン引き。
- 『Sleepless』からラストまでの流れも期待通りに最高。
- 『太陽と旋律』はオーディエンス録音でばりばり音が歪んでいて迫力が増している。ブリューのちょっとしたフレーズが《Absent Lovers》と異なっていて、'81〜'84年度の旋律2だけ抜粋全曲とか聴き比べたい。レヴィンおじさんはすっかり太陽と旋律が身についたらしく、とてもフリーダム。
オーディエンス録音で音質は良好。『Discipline』の序盤だけ左チャンネルの音が飛んでいる。観客がよく盛り上がってる様子が嬉しい。
『Man With An Open Heart』でブリューがセッティングミスって曲を中断してやり直してるハプニングを除けば、これといって公演ならでは!という要素はなく、《Absent Lovers》の音質が単純に落ちた、という内容。というわけで、マニアの方以外はライン録音の《Absent Lovers》を聴いて下さい。DGMでリリースされている'84年ライブはみんなそんな感じなのかな?この公演は特別だよ!みたいなのがあればぜひ教えてください。
King Crimson December 01, 1981 in Vancouver
→http://www.dgmlive.com/archive.htm?artist=6&show=479
'81年のライブは公式にライン録音されたものが(たぶん)発表されておらず、Collector's Clubでリリースされたオーディエンス録音のライブは音質もいまいちだし演奏もカチコチだしで、ぐっとくるライブがいまのところないのが現状ですが(Live at Moles Club, Bath, 1981の資料的おもしろさをのぞき)、さて、これはいかに。
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- 『Thela Hun Ginjeet』が面白い。後半、ビュリューがきゅうんきゅんソロ弾くパートが普段より長め。そこから元のイントロ〜歌に戻るところでリズム隊の動きもまたイレギュラー。計算済みなのかトラブル気味なのを強引に乗り切ったのか、とにかくスリリング。
- 《May 30, 1984 Booklet and Tray Inlay》で聞けなかった『Red』はスローペースながらも強靱。
- 『The Sheltering Sky』のフリップ師はとても気持ちよさそうでノリノリある。後半、どこの大河サントラかと思わせるようなアンサンブルに聞こえる。
- 『Frame By Frame』で中盤一瞬聞いたことないフレーズがあってびっくり。
- この時点でまだレコードリリースされていない『Neal And Jack And Me』、『Neurotica』のプロトタイプ版『Manhattan』が続く。
- 『Neal And Jack And Me』は軽快さと切なさとがよいバランスで、スタジオ版、後のライブ音源よりこれのほうがいいんじゃないかしら。
- 『Manhattan』は歌がないインスト!エンディングパートが後の完成版(リフでスパっと終わる)と異なり音楽的なコーダになっている!
- 『Indiscipline』は長くてだるいw
- 『太陽と戦慄 PT.2』はこれでもかというほどとっちらかってる。フリップが機材トラブルで一時退場するなどしている。ひゃあこわい。
- ラスト、2回目の『Thela Hun Ginjeet』は謎のそこはかとなくサンバ風ブラフォードから。そういえば1回目でも1回だけそんなフィルを入れてた。その後は短めの本編。ラフでおもしろい演奏。
やや、これは意外に良い買い物。やっぱりアルバム《Discipline》はいいものだと再認識。'84年セットリスト中盤にある中だるみ感がないから。音質はやや悪いけれど、なあに、かえって破壊力がつく、といったところ。
King Crimson August 07, 2008 in Chicago
→http://www.dgmlive.com/archive.htm?artist=16&show=1301
2000年型クリムゾン(Lineup 6)から、Trey Gunnが脱退し、Tony Levinが復帰+Gavin Harrisonが新加入して5人編成となった新ラインナップ。ニュースだけ聞いていたけど、このラインナップでのライブ音源がDMGで買えるってのはしらなかったのでさっそく。
そもそも、新加入のハリソンさんって誰?てことでそこから予習。
おー。シャレオツのドラムセット。ハイハットの上に5つ(!)、センターに2つ配置されたの小っちゃいスプラッシュシンバルがシャレオツ。冒頭、口頭でカウントアップして「これは7拍子の曲ですよ」と教えてくれるのが親切。ぼくらプログレ人は言われなくても面白いリズムだなと思ったら必ず拍を数えますから大丈夫ですって!フリップ師も、こんなシャレオツなドラマーつかまえておきながらまもなく活動休止して、「もう、演奏活動なんてしてあげないんだからねっ!」(参考:ロバート・フリップ、音楽からの引退を語る | Rocqt)だなんて…。
聴く前のwktkポイントは
- Lineup 6の曲はどうなるかな?Trey Gunn→Tony Levinの演奏の変化。ドラマーが2人になってどうなるかな?
- Lineup 5の曲はどうなるかな?Lineup 5自体が6人編成((ギター+ベース+ドラム)×2)を持て余していた感が強いから、ちょうどいい案配になるんじゃないかしら。
- Lineup 4の曲(前述の'81〜'84年編成)は単純にドラマーが1人増えた分の差分はいかがなものかな?
で、聴きながらの印象メモ
- The ConstruKction Of Lighはなんかすごく粗い。これはやっぱりトレイ+パットの成熟したコンビネーションが効いてこその曲って印象。
- 『Frame By Frame』で中盤一瞬聞いたことないフレーズがあって…。ってさっきも言ったや。ここはちょっと自由にやっていいポイントなのかもね。
- だらだらと聴いていたら『Level Five』で突然テンションが上がり始めて驚く。この曲のアレンジ&練習してないんちゃいますか!てくらい。続く『Sleepless』もこの5人組特有の演奏で新鮮。
- 丁寧に「5つ打ち」される『Indiscipline』…っ!変拍子DE踊らせる気か!
うーむ全体的にはややいまいち。ギター隊が全体的に引っ込んでるから不安定さを感じるのかな?
まずは原曲たちを消化するために丁寧にやってますといった印象。固有のアレンジを施そうとしたところも面白いけれどまだ試作品の段階。ラインナップチェンジ直後のクリムゾンは大概そんな滑り出しで、その後1,2年でより磨かれるなり人間関係が悪化して乱暴になるなりして熟したところが一番おいしいわけでして、今後が楽しみですね…。……という段階で活動が途絶えてしまって残念であります。
良い点としては、シャレオツなハリソンさんが今までのクリムゾンになかった明らかにさわやかな風を送り込んでいるあたりが聞き所。
いやー、久々にクリムゾン三昧すると癒されますね−。ここんところジェーポップ中心の買い物が続いておりますから、あらためてプログレっていいものですねーとほっこりさせていただきました。I like it!!!!
以上であります。