ショスタ子充まとめその1:交響曲第1番〜第5番
ヤケ買いってことで、ショスタ子の交響曲全集11枚組&協奏曲集など(-_-) キャー、ショスタ子充!
http://wassr.jp/user/derutcarf/statuses/uJWWSFjHDl
カっとなってショスタコーヴィチのCDを15枚も買ってしまったので、せっかくだから1日1曲ずつ聴いてWassrに感想を200文字程度で書いてみようと企画。本エントリーはその第1集5日分の編集。原文は「はてなグループの終了日を2020年1月31日(金)に決定しました - はてなの告知」にまとめました。【「プログレの人」が無理矢理クラシックをレビューする、しかもほとんど初耳で】という試みの無謀さ、無様さがにじみ出れば幸い。
では、いきます。というかWassrのログをまとめます。
交響曲第1番 ヘ短調 op.10
初耳。ショスタ子19歳のときの卒業制作だそうです。恐ろしい子・・・。
このぽっと出ては消えてゆく断片的な感じ、「久々にクラシックの交響曲を聴いているなあ」とちょっと懐かしい。ショスタ子はロック/プログレの心構えでいるから。そんな出だしから様々な楽想が生まれては通り過ぎてゆき飽きさせる余裕を与えない第1楽章、ピアノが颯爽と登場したり力強い旋律にぐっと来る第2楽章、実をよじるようなオーボエ→チェロ独奏から始まるマーラー的な悲劇楽章。第4楽章は「幻想交響曲」終楽章の娯楽性をさらに抜群にした感じ。構成はあっさりコンパクト。あっけなく終わっちゃって、もっとじっくり系でもいけるよ。
音源を探したら、Youtubeに第1番まるまるあがってました。前半のスピード感、後半3'00〜のパワーが効いている第2楽章をチョイス。リンククリックで高音質。
▼Shostakovich - Symphony No. 1 in F minor - Part 2/4 - YouTube
- Shostakovich - Symphony No. 1 in F minor - Part 1/4 - YouTube
- Shostakovich - Symphony No. 1 in F minor - Part 2/4 - YouTube
- Shostakovich - Symphony No. 1 in F minor - Part 3/4 - YouTube
- Shostakovich - Symphony No. 1 in F minor - Part 4/4 - YouTube
学生の卒業制作でこのレベルじゃあそりゃあ天才って絶賛されますわね。
交響曲第2番『十月革命に捧げる』op.14
あたい、ショスタ子、アンタのことがす、好きかも…て恋が芽生えるきっかけとなった曲。その瞬間のつぶやき。
年の初めはクラシックでも聴こうとショスタコーヴィチを取り出してくる。交響曲第 2 番「十月革命に捧げる」。冒頭から恐るべき混沌。癒されるわ〜★ *Tw*
http://twitter.com/derutcarf/statuses/549741762
12:47 AM January 01, 2008 from Twit
共産主義が見た夢。1番は「20世紀の空気から生まれた天才の秀作」って印象だったけど、2番にして「秀才」が嘘のように凶悪前衛音楽を奏でる。いや、この当時この場所では、これが政治的宣言として真面目に作られ(国立出版所の宣伝部が10月革命10周年のための曲としてショスタコーヴィチに委嘱)そして評価され(革命10周年記念コンクール1位)たっていうんだから興味深い*1
序盤の不吉なうねりがブラックホールのように耳を引きつける。中盤27声らしい「ウルトラ対位法」は集団コント。奏者全員が違う旋律。いわゆる「現地集合」ってやつにドーンと結実するカタルシス。サイレンと共に幕を開ける終盤の合唱もまた絡み合う旋律がポリフォニーフェチにはたまらない。ぞっくぞくするやろ。
交響曲第3番『メーデー』op.20
初耳。共産主義が見た夢、再び。第2番に続いて単一楽章もので一気に聴けてよい。全体的な印象は前衛っぷりがざーっと後退し、よく言えば分かりやすくいまいちな言い方をすれば薄まってしまった感がする。
- 前半1/4の冒頭ちょっと退屈だけど、その後のスペクタクル性はとても楽しい。「ベースライン」がどんどんどんするところで耳がポピュラーミュージックモードになる。ポップス耳がベースラインから想像される音から明らかに外れたぶっ飛んだ音程を金管楽器が奏でていたりして、「すごいなあ」と意味もなく感心し、ポップス脳(コード進行を基調とした音楽)の洗脳力の強さを思い知る。前半10分で満足した。
- 2/4の緩パートでぼーっとしているとピッコロ大魔王のビームで叩き起こすなどそこら辺は抜け目ないショスタ子。
- 3/4のキメパートはZAZEN BOYSばりにもっとばんばんやれば良かったのに。このパートは美味しい。ただ、合唱へのつなぎパートは退屈。
- 4/4合唱も2番に軍配かな。
今後の作品に期待。
交響曲第4番 op.43
初耳、の60分越交響曲の感想をいきなり述べるって軽く修行じゃない。これは苦行じゃないかという初見殺しの難曲。4番目にして俄然本格的になってきた。
- 第1楽章はめまぐるしい。初耳じゃほんと何が起こっているのか分からない。後半当たり、あらゆる楽器があらゆる音程を奏で、まるで体育館で全校生徒がおしゃべりしているようなノイジーなプレイにぐっときた。これが、パートごとに副題がついていてCDのトラックが分かれてたら「すっごい楽しい傑作組曲!」とか言ってたよきっと。
- 第2楽章は緩く統一感がり、動機が印象的でその後の展開が追いやすい。って分かりやすさに胸をなで下ろすって、アタイはショスタ子の何が好きなのさと自問自答。エンディングは一種のアーリーテクノ。絶妙。
- 第3楽章もめまぐるしいけど第1より物語を感じられて振り回される思いはしない。で、突然「あ、やべ。そろそろ放送時間いっぱいだからちゃちゃっと盛り上がりマース」みたいに急展開。「あ、やべ。でも巻きすぎて時間余っちゃった。間をつながなきゃ」みたいに静寂が続く。このエンディングはロックのトータルコンセプトアルバムで「続くかもよ!?」を臭わせる余韻のようでとてもいい。って部分の抜粋がニコニコにあがってた。
ピンポイントで聴くとほんと傑作。
難曲。
交響曲第5番 op.47
通しでは初耳。やればできる子ショスタ子。4番をお蔵入りにして5番で勝負したのは納得。ここまでの破天荒っぷりからは嘘のように引き締まった曲。古典的でありながら古典の人には決してできない響きの結晶。
- 第1楽章は「今日は暴走しないって決めたんだ!」という強い抑制。1〜4番まで定番の冒頭から暴走してゆくショスタ子はここにはいない。覚悟が決まった精神的に力強い音楽。
- 第2楽章の舞曲は100年時を巻き戻したかんおよう。ちょいちょいジョンゾーンがバップを吹いているようなおもしろさがある。
- 第3楽章は悲しく落ち込み感情が高ぶりかけまた落ち込みやっぱり激しく嗚咽してまた落ちてゆく超低周波。ハープのフレーズが良い。
- 目玉商品第4楽章。有名なメインテーマは以下略しといて。中盤は「長調への長い旅」が2回続く。1回目はハープの綺麗なフレーズを目指して、主題の再現からの2回目は終盤クライマックスめがけて。終着地が見えてきて哀調から喜調へグラデーションしてゆく様がよい。でも長調になったかと思えば怪しい音が覆い被さってきて一筋縄ではいかないところも。
▼http://www.nicovideo.jp/watch/sm2198320
ニコニコ他5番はいっぱいあがってるのでぜひ通してお聞きアレ。
総論
先週月〜金にかけて聴いた[ショスタ子充]1番〜5番をコピペして1本のエントリーにしようと、簡単な編集をしつつブツを聞き直しているところ。初耳でなんかいまいちげな感想を書いた1番3番も2回目改めて聴いていたらそんなの撤回せざるを得ない流れになってきた。さらに何度も聞いて頑張って24回聴いたら打ちのめされるってパターンか。プログレフリはツッコミビリティが低すぎるので、自分でやっておく。今時な口調で。「LIZARDですね。わかります。」
http://wassr.jp/user/derutcarf/statuses/0WjJZHXLCj
楽しかった。ショスタコーヴィチの良いところは、常に一筋縄ではいかない変な音が鳴っていて退屈じゃないところ。過激な場面転換で楽しませてくれる。緩く長い楽想もポリフォニーを追っかけたりと娯楽を提供してくれる。正直、「古典派」「ロマン派」と言われる世代の交響曲は通して集中できないことが多かったから、この企画を始める前は心配だったけど、それはほとんど杞憂だった。楽しい。続きが楽しみ。
参考:
- ドミートリイ・ショスタコーヴィチ - Wikipedia
- http://homepage3.nifty.com/ongaku-no-chanoma/comments~shostako.htm
- http://homepage3.nifty.com/tkoikawa/music/shosta/index.html
関連:
(来週に続く)