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怪奇骨董たおやめぶりっこ

ますらおぶりに憧れるブログ。涙がちょちょぎれちゃう。だって怪奇骨董たおやめぶりっこだもの。

「TENORI-ON」販売受付まもなく開始/KAOSSILATORと机上比較/電子楽器が超えるべき壁

いやはや、「たおやめぶりっこ/ますらおぶりっこ」エントリーが、検索語「kaossilator」の上位に表示されちゃってやってきた人たちに、だっさーい音源とか聴かせてしまってほんと申し訳ない気持ちでいっぱいになりつつ。

  1. KAOSSILATOR に続く目玉電子楽器「TENORI-ON」の販売受付がいよいよ始まるそうですよという話。
  2. KAOSSILATORTENORI-ON を比較してみようという話。
  3. 電子楽器には古典的な楽器を超えられない壁があるんじゃないかという話。

TENORI-ON」の販売受付は 5/12 から

ヤマハは16×16個のLEDボタンを使った新コンセプトの電子楽器「TENORI-ON」(テノリオン)の販売受付を、5月12日から専用サイトで開始する。メディア・アーティストの岩井俊雄氏と共同開発した楽器で、音楽知識なしでも感覚的に操作できるのが特徴。価格は12万1,000円。専用サイトには操作中の動画や、取扱説明書などが用意されている。

http://www.dtmm.co.jp/archives/2008/04/tenorion512.html

TENORI-ON - ヤマハ株式会社( http://www.yamaha.co.jp/tenori-on/ )

オフィシャルサイトで、様々な機能の紹介動画、いろいろなミュージシャンにいじらせてみた動画、デモ曲などが視聴でき、またマニュアルがあがっているので気になる仕様もしっかり確認できるのでゆっくり楽しんでいってね!

YouTube - TENORI-ON Product Demo Performance

手っ取り早くひとしきりの機能が見られるのはこの動画ね。

Kaossilator との印象比較

TENORI-ON がどんだけ KAOSSILATOR を意識して開発されたかは分からないけど、たぶん日本でも1000本の指には入るであろう KAOSSILATOR 常用者のわたくし*1には、KAOSSILATOR との差異が気になって仕方ないのでありますよ。

KAOSSILATOR があえて除いた機能

TENORI-ON には、KAOSSILATOR があえて省略した機能がてんこもり。永続性(データを保存する機能)と、ワーキングメモリー上の編集機能の自由さを最大のポイントとしてあげたい。

TENORI-ON は、作ったトラックをしっかり保存できる。ループも、「レイヤー」と「ブロック」により細やかな作り込みができる。「レイヤー」はトラックとかチャンネルとかパートとか言い換えできる機能。個別のパートを個別に常に編集できる。「ブロック」は「レイヤー」をひとまとめにして、「Aメロ」「Bメロ」みたいなもんをいくつか作れる。(詳しくはここ嫁→http://www.yamaha.co.jp/tenori-on/what/index.html

いかにシンプルにするか。ひとつの機能がワンスイッチになるよう取捨選択に時間を使いました。そのおかげで、残った機能は一個一個が面白いものになったと思います。シンセをカンタンにする検討は毎回行なっていますが、今回は極限まで機能を絞り込むことで、誰にでも使えるぐらいカンタンになった。

ASCII.jp:小さいけど、すごい! 話題のシンセ「KAOSSILATOR」って何だ? (4/4)

KAOSSILATOR はかくのごときコンセプトで、特に永続性(データを保存する機能)を完全に捨てた。電源を切れば、あるいはイレースボタンを押してしまえば二度と戻ってこない刹那性。変な音を重ねちゃったらやり直しが効かないスリル*2KAOSSILATOR は「レイヤー」がないのでひとたび記録した音は二度と編集できないし、「ブロック」もないから一つのループを使い続けることになる。

まとめると、TENORI-ON はしっかり打ち込みができるというわけ。それはそれでもちろん嬉しいのだけど、どっぷり KAOSSILATOR の世界観に浸ってしまうと、編集機能の自由さが逆に仇となり「作り込み症候群」を発病してしまいそう。満足行くまで細かく細かく試行錯誤を繰り返して悩んでいやになっちゃう症状。

練習スタジオで、「古典的な楽器が演奏できる人」と一緒にインプロヴィゼーションをするための道具として電子楽器類を使用しているわたくしとしては多機能性が足かせにならないよう気をつけたいところ。インプロの最中、KAOSSILATOR で偶然おいしいループが作れたときの脳汁を忘れずに。

(-_-) でも欲しい。

KAOSSILATOR からあえて除いた機能

KAOSSILATOR を意識したかしないかはさておき、KAOSSILATOR にはあって TENORI-ON では弱いところ。

スケール。KAOSSILATOR が 30 種類で、TENORI-ON は 9 種類。イオニアン〜ロクリアン*3+クロマチック(半音)+琉球*4KAOSSILATOR みたいに、ブルースとかラーガとかスパニッシュとか「なぞるだけでそれっぽい曲調になる」便利スケールがない。ちょっと残念ね。

そんなもんかな。

KAOSSILATOR のリード音色でぶいぶいソロプレイするときと、TENORI-ON のソロモード(動画)の違いについては、優劣というより個性の違いですね。横軸が音の高低、縦軸がゲートアルペジエーターの種類になっていて、複数同時押しは個別の音が鳴る。ふんふん、なるほど

ちなみにKAOSSILATOR で2カ所同時押しするとその中間の音が鳴る。これを利用すると・・・って話は動画つきじゃないと略

まとめ

TENORI-ON は、変拍子(奇数拍子)&ポリリズムがかなり自由自在っぽいので1人でライヒライヒできそうで妄想棒がびんびんになってしまいますね。KAOSSILATOR との比較では、それぞれがお互いに個性的なので併用するといいと思いました。ちゃんちゃかちゃん。

電子楽器が超えるべき壁

こういう電子楽器は、いつもここで音色何番を選ぼうかとかアルペジエーターはどれを使おうかとかそういう意志決定を常に行わなければならないのが大変。シンプルな KAOSSILATOR でも「ここで音色55番をあるペ時エータ2番で重ねよう」とか選択しなくちゃいけないのに、多機能な TENORI-ON に至っては!

古典的な楽器は物理現象と直結していて、呼吸とか力の入れ具合といった身体性からのフィードバックが強い分、楽器と肉体が合体し人間が楽器を体の一部に拡張しやすい。そこで練習を積んで慣れれば無意識の領域に
達することが出来る。楽譜を演奏するのにいちいち頭で考えないし、アドリブも本能的に行われる。

その反面、電子楽器のたぐいはどうしても言語的な操作が必要で、いくら慣れても意識の力が必要になってくる。操作も指先でちょこちょこっといじるだけで一体感がない。そこに越えられない壁があるんじゃないかと思う。TENORI みたいな複雑怪奇な電子楽器を「音楽が降りてきてる状態」(例えばピアニストが演奏に没頭している状態)で操るという体験がとても想像できない。これもうヒトが進化しないと無理なんじゃないか。「意識」が退化してなくなってもいいけどね。

TENORI-ON開発の際には、従来の楽器と電子楽器の違いについて深く考察したという。「従来の楽器はギターでもピアノでも、音を鳴らすための必然とした形状のデザインとして完成されている。ヤマハから発売された初のシンセサイザー『DX-7』も、インターフェースはピアノ同様の鍵盤。シンセサイザーは確かに新しい発想だったが、入力に対しては新しい提案をしていなかった」(岩井氏)。さらに、電子楽器はアコースティックな楽器の形にとらわれてしまったため、個性を発揮できていないのではないかと指摘。

現在の楽器インターフェースは最適解か?――岩井俊雄氏、TENORI-ONを披露 - (page 2) - CNET Japan

そんなわけで、昨今から近未来にかけて電子楽器が「古典的楽器の常識にとらわない新しいインタフェースを発明する」ブームが一段落はさっさと成熟してもらって、その次の「音楽への没入を可能にするためのインタフェースを発明する」というフェーズに入ってもらいたいなあと思う次第。

手っ取り早くは、「パッドが50センチ×50センチ/叩く強さやこする速度にも反応」みたいな KAOSSILATOR があったら白目剥いたクリスチャン・ヴァンデみたいに音楽に没入できるかもね。

参考:

*1:スタジオで音を出して遊ぼう企画「折り合いブラック」で日々使用中→折り合いブロッグ

*2:「FIX」機能を使えば一回だけアンドゥできるけど、音が一瞬止まってしまうのでセッションなどでは有効ではない。

*3:旋法 - Wikipedia 参照

*4:公式サイトのマニュアル参照:http://www.yamaha.co.jp/tenori-on/downloads/index.html