怪奇骨董たおやめぶりっこ

ますらおぶりに憧れるブログ。涙がちょちょぎれちゃう。だって怪奇骨董たおやめぶりっこだもの。

Tanne 1st concert with oboe@東京オペラシティ 近江楽堂

折り合いの縁でみてきましたクラシック室内楽コンサート。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの弦楽三重奏+ゲストにオーボエ奏者を招いての全4曲。

  1. モーツァルト/ディヴェルティメント K563
  2. ブリテンオーボエと弦楽のための幻想曲 Op.2
  3. ホリガー/無伴奏オーボエのためのソナタ
  4. モーツァルトオーボエ四重奏曲 K370

なんというか、普段はジャズから始まる*1ポピュラーミュージックを中心に聴いていますから、クラシックはやっぱり新鮮ですよね。ポピュラーミュージックのコード進行理論によって和声の流れがすごく大雑把に量子化されてがっくんがっくんした音楽に慣れると、クラシックの緩やかにすべての音が調和してうねってゆく様がね。ポピュラーミュージックってやつは脅迫的なまでにテンポも拍子も一定で人間の精神をどこかしら冒すと思うんですよ。もちろんその冒されている感じもまた快楽なのですけど、ええとなにかカルトがかってきたので、各曲の簡単な感想に移らせていただきます。

クラシックの本流の鑑賞法、あの曲をこの奏者はどう解釈するんだろうとか技法の巧緻とかは専門外なので立ち入らないでおきます。

各曲

モーツァルト/ディヴェルティメント K563

弦楽三重奏。

ディヴェルティメントK.563 - Wikipedia

YouTube - Fan&Musik Mozart's trio Divertiment in E-major k.563 1mov

多感な周囲が流行歌やカラオケなどに情熱を燃やす様子を完全無視でクラシックをどっぷり聴いていた中高時代のわたくし*2ではありますが、当時からモーツァルトアレルギーを患ってしまい、今でも苦手なのであります。そんな WAZURAI がゆえに最初は何かを心配していたのですが、いざ演奏が始まってしまえば「音響」と「演奏の視覚効果」と「生の緊張感」と相乗効果で見事に打ち消されてよい塩梅でした。

特に第2楽章の「モーツァルトじらし」・・・トリルがトリトリトリトリトリトリルリルリルリルリルって鳴って終始するぞ終始するぞ終始するぞと見せかけて肩透かしてまだ和声が進行するみたな・・・がツボでした。

ホリガー/無伴奏オーボエのためのソナタ

オーボエ独奏。これはすごい。オーボエってこんなに迫力がある楽器だったんだとバチバチと身体が共鳴する。音楽は虚ろなメロディと緊張感のあるパッセージと密度と間と下降と上昇の尾ひれが交わる不協和がたまらない。どう考えてもプログレ脳です、本当にありがとうございました。

ブリテンオーボエと弦楽のための幻想曲 Op.2

YouTube - Festivus Quartet playing Phantasy, Op. 2 by Britten

オーボエ四重奏。これもすごすぎる。チェロ独奏から他の弦楽がフェードインして最初のリフを提示しそこへオーボエが滑り込んでくる冒頭の展開でもう昇天。ロバート・フリップが30年に1回の最高のタイミングで最高のソロでバンドアンサンブルに加わった瞬間のよう。折り合いブラックにおいては、「メロウエレクトロン」や「パワー・トゥ・ブリーフ」以降のインプロにおいて目指す究極のところはまさにこの楽曲の冒頭ような「リード楽器が入ってくる瞬間」なのだと再認識したしだい。さっきのオーボエ独奏に比べると聴衆は幾分拍手が小さかったけど、むしろぶらぼーと叫んで立ち上がりたいくらいのぶらぼーさ。そこから先は単一楽章13分だけど、これ何時間でも聴いていたい。

モーツァルトオーボエ四重奏曲 K370

YouTube - 2006.05.12.Jennifer音樂會

オーボエ四重奏。モーツァルトコンプレックスも前2曲の圧倒で忘れてしまっている最終曲。最も気になったのは、解説にあったイカのくだり。

うひょーポリリズムたまらんばい!とヨダレをたらしながらの第3楽章。

弦楽の 6/8 側に体をゆだねてうんぱっぱうんぱっぱとずっと「のどの辺りで」カウントし続けていれば、オーボエ側がずれてゆくときにキターってめくるめく状態になるはずだと集中。まるで大のモーツァルトファンで没頭しているかのような。

(-_-) ど、どこのことか分かりませんでした。

きっと流暢に溶け込んでいたのですね。「ほら、ここポリってるよ」と演出するための作曲じゃないってことですね。

モーツァルト/???

アンコール。「オーボエと弦楽のためのアダージョ」みたいなアナウンスだったような気がするけれどちょい忘れた。きっとRelaxin' ライブのときみたいに中の人がひょっこり現れて教えてくれるはず!!

総論

先に書いてしまったけれど、「音響」と「演奏の視覚効果」と「生の緊張感」というのはライブ演奏の醍醐味。小さな楽堂で目と鼻の先の演奏においてその効果は絶大。特に顕著なのが、「テクノイズ」って言うのかな、そういうノイズの効果。

最近知った言葉なのですが、「テクノイズ」という、演奏するに伴って出てしまうノイズ、例えばギターを弾く時の指と弦の擦れる音や、ピアノを弾く時のペダルを踏む音などを指す言葉があるらしいのです。野外会場の風の音や、観客の歓声やざわめきなんかも広い意味でのテクノイズに入るわけで

http://oshiete1.goo.ne.jp/qa996352.html

クライマックスはコンサート冒頭のチューニングでいきなりやってくる。クラシックのコンサートで、チューニングで悶絶絶頂するって人は結構多いんじゃないかな?そんなに変体さんじゃないよね?

あとは、楽章の間の咳払いや大勢を変える人が出す衣服や椅子のずれる音。これはインプロヴィゼーションによる間奏としかいいようのない絶妙な空間を作り出す。ね。そりゃケージとかが人為的にそれをやろうとする気持ち分かりますわよね「ざわざわ」。そいでもって、緩やかに弦と弓が触れる離れる瞬間の「きりっ」て音や管楽器のブレスも大切な音。

こういう楽譜上には絶対現れないノイズ、レコードからは丹念に取り除かれるノイズを含めた音響ってのが生演奏を聴く大きな価値だと思う夕べでございました。

いいですよ、クラシック。かくのごとくプログレ脳でも満足することうけあい。

*1:そして J-Pop でひとつの終焉を迎えようとしている

*2:高校末期からプログレに華麗に転身転落