羊毛とおはな&中山うり@タワーレコード渋谷店/Relaxin@キンのツボ
人間と音楽の関わりは、人間と神との関わりに似ている。音楽と宗教儀式といった直接的な関係もあるけど(それはそれで興味深い)、ここではあくまで個が音楽と向き合うときの関わり方についてである。古今東西の人間と神との関わりをたずねることは、己が音楽と関わりを考える思索の旅。だから宗教や信仰に関する本を読むのが好きだったんだなあと自己分析。してしまった一日。
休日音楽ライブ タワーレコード渋谷店
「羊毛とおはな」と「中山うり」の二組のミュージシャンによる30分ほどずつのミニライブ。
羊毛とおはな
羊毛とおはなはうたのしもべ。
▼YouTube - 羊毛とおはな「手のひら」LIVE IN vale tudo !! '07 12/14
とても丁寧で暖かいギターに素朴でまろやか歌と歌声。人間が一人でうたをうたうという機能を獲得したのは進化論的にどのような意味があるのだろう・・・とゆるやかな思考の散歩をまどろんだ。シンプルな構成・編成だからこそうたをうたうひとのうたの魅力がしみこみますね。
- 公式サイト:羊毛とおはな official HP
▼YouTube - Ally Kerr - The Sore Feet Song - Video
ガイジンだとこんな雰囲気でしょうか。英語で素朴な歌を聴くと、ガイモン&サーファンクルばかりが思い浮かんでしまいます邪念。→http://d.hatena.ne.jp/fractured/20071115/1195150338
中山うり
中山うりは音楽の神の子。
▼YouTube - 中山うり - マドロス横丁@Rising Sun Rock Fes 2007
中山うりはボーカル、アコーディオン、ときどきトランペット。そのほかのメンバーはウッドベース、ギター、ドラム、パーカッション。タンゴ南米調うんぬんのさまざまな音楽を日本土着歌謡の土鍋で煮詰めたジャズ料理。天才料理人は生み出される料理が美味いのは当たり前で、料理人その人が放つ異彩こそが真髄の髄液肉汁うまみうまうまなのだ。
下へ、右へ、下へ、左へと配られる視線とゆるやかにうつろう表情。歌を歌うときは聴衆に向かい、楽器を弾くときは内なる音楽と向かう。歌の合間にある一瞬のアコーディオンでさえ内部へ向かい、すぐさま歌い始めると外に向かう音楽。それに伴う視線と表情。「視線は楽器」。アイドルが歌いながらのダンスとともに、視線の送り方を猛特訓される様をテレビで見たことがある。そういうことだろうね。中山うりの場合は天性なのだろう。そんな視線の楽器がつむぐメロディに一番ぐっときた。これはライブでしか聴くことのできないメロディ。全員好きになるわこれ。
- 公式サイト:中山うり オフィシャルサイト
- iTunes:中山うり
ONE-COIN LIVE ジャズテナーサックスナイト <Relaxin LIVE>
用賀 ライブ居酒屋 キンのツボで行われた、ジャズ・コンボ「Relaxin」による30分×3ステージ。折り合いBチームでおなじみ、チェリストの cherry さんが第1ステージでゲスト出演するということで招待されました。
2008/01/12の予定 詳細情報
Date : 2008/01/12
Title : ONE-COIN LIVE ジャズテナーサックスナイト <Relaxin LIVE>
Charge & Time : \500
演奏者 : 林田浩一 (sax) 田山克平 (p) 平松徹也 (b) T (ds)
詳細情報 : クラリネット・バイオリン・チェロのゲスト出演有
大衆的ないわゆる「大人のジャズ」が半分、ホットなモダンジャズが半分といったところ。前者のイメージでジャズを認知・販売しようとするマスメディアにとてもファッキンな想いを抱いているわたくしとしてはやっぱり後者の選曲に盛り上がる。ジャズはロック以上にエキサイティングだ。ぜひ若者にこそジャズを聴いて欲しい、みたいなね。
ゲスト出演者(チェロ・クラリネット・バイオリン)
ゲスト出演者は三者ともクラシック畑の人で、この機会にジャズに「チャレンジ」したようだ。これはとても興味深かった。音楽との関わり方がまったく異なるジャンルのプレイヤーによる競演ですから。
- チェロの人は文字通り「エイヤ」でアドリブに飛び込みジャズ側に踏み込んだようだ。未踏の地を切り開く緊張感がびんびん伝わってきた。
- クラリネットの人は、アドリブパートを「作曲」したみたいなことを言っていたから、12小説×nコーラスのコード進行を元に音符を書いてきたのだろうか。とするとクラシック側に踏みとどまりながらのジャズへのアプローチ。音色はうっとりするような美音。ベニー・グッドマンではあるけどエリックドルフィ(バス・クラリネット)ではない、みたいな。
▼YouTube - Dolphy bass clarinet
エグいクラリネット!これぞ!
- ヴァイオリンの人は不明。ちなみに、ヴァイオリンを調律してるときの音が今夜いちばんぞっくぞくしてたまらなかったのだけど、変体なのかなあ。オーケストラも同様、冒頭の調律がクライマックス。それだけできてよかったと音楽に感謝のお祈りを捧げるもの。
良かった曲
チック・コリアの「Humpty Dumpty」。イントロからうおーって思いますね。実際にうおーって唸っていたのは演者の常連らしき客でしたが。これは熱かった。関連:http://d.hatena.ne.jp/fractured/20071025/1193317409
▼YouTube - Chick Corea Acoustik Band - Humpty Dumpty
チックの曲は「Bul Powell」と「Spain」が取り上げられています。Spain はヴァイオリニストの情熱が大陸するようなのびのある旋律が圧巻。
あと、驚きだったのはウェイン・ショーターの「Yes or No」。
▼YouTube - nelson veras summer 2000
ショーター自身による演奏が見つからなかったのでアコースティックギター奏者の映像で。ショーター&マッコイの映像ってないのかなあ。それはさておき、この曲をやるならその勢いでコルネット奏者をダーティに調教してコルトレーンの「Ole」とかやってくれたら悶絶死するかもよって思った。
それにしても、ジョー・ザビヌルの綺麗な曲はなんていうのだろう。あのイントロよかったなあ。
追記
▼YouTube - Weather Report - A Remark You Made
「ジョー・ザビヌルの綺麗な曲」は「A Remark You Made」でした。なにこれ!ザビヌルのモノフォニックシンセのソロ超萌えるですけろ。けろって。
まとめ
生はいいですね。CD などで名人達人たちの音源をじっくり鑑賞するのもよいですが、こうやって素朴なプレイヤーの生演奏を聴くのもまた味わいが違います。