「Suspicious Activity?」The Bad Plus
http://d.hatena.ne.jp/fractured/20071007/1191780085で出会ったピアノ・トリオ、The Bad Plus の過去作品を聴いてみた。Jazz。2005年製。
最新作「Prog」を聴いて、The Bad Plus は、轟音ジャズと形容される破天荒なとんがりっぷりと、「ジャンルに囚われない(笑)」カバー曲のチョイスとその消化吸収率の高さを特徴とするジャズ・コンボ、と理解しました。
カトリックジャズ教徒に恐る恐る薦めてみる一枚
「異端な曲」数曲を除けば、オーソドックスなジャズ。オーソドックスといっても、ぜんぜんまったくスウィング・スウィング・ヘイ、ビバップ!みたいなオーソドックスではなくって、Misha Mengelberg を聴いたとき*1に感じた「フリーダム」なジャズ。爽快なほどにフリーダム。「異端な曲」も、「Prog」ほど強烈に異端ではなく全体の流れと調和している。
「Prog」はジャンル不詳の闇鍋バンドみたいでしたが、こちらはあくまでもジャズだなあと感じられる作品。「The Bad Plus?あんな奴らはジャズとして認めん!こんなのを聴く人間は完全に無知で無能でクズ。アホでバカ。低脳でワーキングプアだ。死後永遠に地獄の業火に焼き尽くされたくなければ、悪いことは言わない、エヴァンスとモンクを一生研究しなさい。それが主の御心。でなければジャズ好きを名乗る資格はない破門じゃ!」とお怒りの各協会の司祭様*2にも恐る恐る薦められる作品。
猛烈なキラーチューンはないけれど、アルバム全体としての統一感とスルメ度は高い好盤です。
異端曲紹介
▼YouTube - The Bad Plus - Prehensile Dream
異端曲その1。クラシカル。『月光』第2楽章のような緩やかな楽曲が徐々に盛り上がって壊れてゆく定番パターン。定番ながらも、暴発が突き抜けて静寂に転位する様は心地よいものだ。
▼YouTube - The Bad Plus - Anthem For the Earnest
異端曲その2。こちらはずっと単調に続いてゆく。この単調さに退屈するか快感になってくるか意見が分かれそう。テクノ的っつうと齟齬りそうだなあ。NUE! 的ってことにしよう。「ハンマー・ビート」ですね。「Hallogallo」ですね。そんなテクノとプログレの境界的横断的嗜好をお持ちの諸兄を狙い撃ちしたような異端曲。( ゚∀゚)彡ハロガロ!ハロガロ!
▼YouTube - The Bad Plus - Chariots of Fire
異端曲その3。ヴァンゲリスの有名曲「炎のランナー」のカバー。The Bad Plus らしく実に歪んだアレンジが施されています。
ヴァンゲリスって誰?こんなヒトです。
「炎のランナー」「ブレードランナー」「南極物語」といった映画の音楽を手掛けたヴァンゲリス・パパタナシューはしまいにはワールド・カップのテーマ音楽(2002 FIFAワールドカップ)を手掛けるなど、今ではプログレおたくの手の届かない世界的な超有名人となってしまったが、こうなると一言二言言いたくなるのがマニアのサガ。
http://cottonwoodhill.blog21.fc2.com/blog-entry-670.html
Google 先生に「ヴァンゲリス プログレ」などと呪文を唱えるといろいろ教えてくれるでしょう。「プログレ界のジェンキンス氏」ことカール・ジェンキンスみたいなプログレ→商業的大成のパターン。
▼YouTube - "We are the championes" the bad plus
あと、日本盤にはボーナストラックとして、Queen の「伝説のチャンピオン」のカバーが収録されています。やりすぎ感が否めない破壊的な解釈は唯一無二のお家芸ですね。大胆に破壊しながらも最後の最後に元楽曲の美味しいエッセンスを派手に決めてくれます。