怪奇骨董たおやめぶりっこ

ますらおぶりに憧れるブログ。涙がちょちょぎれちゃう。だって怪奇骨董たおやめぶりっこだもの。

「Last Date」Eric Dolphy

今日聴いた音楽。ミニマルプログレミニマルプログレと体力勝負が続いたのでゆったり Jazz を聴いて癒されましょう、その2。'64 年、アメリカ製。マルチリード奏者、エリック・ドルフィの遺作。36 歳で亡くなる1ヶ月前にオランダで録音されたライブ。前回 http://d.hatena.ne.jp/fractured/20070906/1189095662 から突然 40 年遡りました。というのも、40 年前の若きミシャ・メンゲルベルグとハン・ベニンクが、ここで競演しているから。

Last Date

Last Date

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http://ax.phobos.apple.com.edgesuite.net/images/badgeitunes61x15dark.gifEric Dolphy - Last Date

  • Eric Dolphy:as (on 3),bcl (on 1,4),fl (on 2,5)
  • Misja Mengelbelg:p
  • Han Bennink:ds
  • Jacque Schols:b
  1. Epistorophy
  2. South Street Exit
  3. The Madrig Speaks,The Panther Walks
  4. Hypochristmutreefuzz
  5. You Don't Know What Love Is
  6. Miss Ann


エリック・ドルフィ作品はまだかいつまみ程度の範囲で聴いた限り、「Out to Lunch!」や「At The Five Spot」などもとてもよいのですが、「なんとなくふと聴きたくなる」のは断然「Last Date」。遺作って重みもあるのでしょう。

ドルフィというと、ジョン・コルトレーンほどかちこちしてなくて、アルバート・アイラーほどぶっ壊れてない絶妙な中間あたりというイメージ。曲の音楽性から限りなく遠く離脱して一周戻ってきてその音楽性にマッチしたような卓越したアドリブを繰り出す。しかもそのソロが強力に圧縮されていて短い。とめどなく吐き出し続けるようなプレイヤーとは好対照。

そんな様子動画。


「Last Date」、そしてモーツァルト

「Epistorophy」。バスクラリネットによる咆哮から、狭義のポリリズムによるイントロに入るアルバム導入部からもう耳は釘付け。元が実にセロニアス・モンクらしい*1ユーモラスな曲調に、クラリネットとは思えない表情豊かなアドリブが煌く。

それまでクラシックにおいて使用されるのが主だったバス・クラリネットをジャズの独奏楽器として用いたことは、後のジャズ奏者に多大な影響を与えた。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC

そりゃあ多大な影響を受けるわ。クラリネットでこんな表情豊かな音が鳴るなんて。

ドルフィは、「South Street Exit」「You Don't Know What Love Is」でフルートを吹いている。「South Street Exit」は、ああジャズのフルート演奏だなあという具合なのだが、「You Don't Know What Love Is」はこれまた多大な影響を受けざるを得ない名演。クラシックの演奏では決して聴くことが出来ない、入力過多で歪み、入力過少で揺れる音を効果的に縦横無尽に繰り出す必殺しゃがみ弱キック連打時々キャンセル波動拳でパーフェクト KO。「普通の音」を吹いていても、スウィング感やアドリブフレーズはやっぱりクラシックとは別物。Jazz 的なものとは何ぞや、という問答に「これじゃ」と応えるのにうってつけ。この後にモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」とか聴いてみると面白いよ。

▼ W. A. Mozart - Concerto for Flute and Harp C-dur

ドルフィ→フルート、メンゲルベルグ→ハープ。


プログレフルート、そしてバッハ。

[asin:B0007TFCFW:image]

プログレの疲れを癒すはずなのだけどプログレのことが頭に浮かんで離れません。そう、フルートといえば、Jethro Tull の イアン・アンダーソン。こちらは「ロック・フルート」。半分歌いながら吹くのが特徴。バッハなどを織り交ぜつつやりたい放題ですね。ジェスロ・タルジェスロ・タル・・・いかんいかんここはぐっと我慢して落穂拾い的なエントリーを別件に。

上のイアン・アンダーソンが垣間見せたバッハは、たしかこれだったよねと Youtube 探して見つかった動画がこれ。

視覚的!そしてプログレッシブ。フーガ部分、主題や応答、各和声の絡み合いが分かりやすくてとてもいい。このフーガは、フーガとしてはラフなのでポリフォニー的悦楽*2は若干弱いけれど。それにしても、これぞ「神曲」。みんな気軽に「神曲」「神曲」ってゆっちゃうけど、「神曲」はこうでなくっちゃ。

・・・いかんいかんここはぐっと我慢して Jazz の次にクラシックに移行しましょうか。

結びに

アルバムの最後は、ドルフィの次のような肉声で締めくくられます。

When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You can never capture it again.
(「音楽は空(くう)に消え、二度と捉えることは出来ない」)

▼ Kenny Millions, Han Bennink, Misha Mengelberg

「Last Date」のバックで、ミシャ・メンゲルベルグは既に「フリーダム」なソロを披露していて、逆に、ハン・ベニンクは堅実にスウィングしていた。それから四十余年後に「Epistrophy」をやる姿。3:20 あたりから。ハン・ベニンクの変容っぷりに時の重さを感じつつもなんか笑ってしまうのが「フリーダム」なのだ。

*1:モンクの演奏はこちら http://jp.youtube.com/watch?v=F2s6LZUdYaU

*2:ポリリズム」や「変拍子」の悦楽については度々述べている。バロックの愉しみである「ポリフォニー」についてもいずれ触れたい。