怪奇骨董たおやめぶりっこ

ますらおぶりに憧れるブログ。涙がちょちょぎれちゃう。だって怪奇骨董たおやめぶりっこだもの。

「Reich Exclucive Selection」Steve Reich

ミニマルを復習してみる第 3 弾。'73 〜 '94 年、アメリカ製。ミニマル・ミュージックの大家、スティーブ・ライヒ作。

スティーブ・ライヒのベストアルバム。ライリーはベストで聴くのがよい。「18人の〜」とか「砂漠の音楽」とか「Drumming」とか、かいつまんで抜粋じゃない全編を手に入れて聴いたものの、これは正直しんどい。グラスやライリーに比べると、音楽がドラマチックに前進する感じが希薄で本当の意味でのミニマルだから。

逆に、こうやってベスト版で聴くとそれぞれのサウンドの個性が緩急となって集中して楽しめる。また、iPod とかにひたすら詰め込んでおいて、全曲シャッフル再生してるときにライヒの曲がふと選択されると劇的だ。ハードロック→ライヒ→J-Pop とか。ライヒを見直すきっかけになったのも、度重なる iPod の演出がきっかけだ。これはおすすめ。

というわけで、ライヒは編集版で楽しみつつ、他の聞きやすいミニマルミュージックをいろいろ経た上で、ライヒ作品に挑むという流れはどうでしょう。と、ミニマル入門者のわたくしが独断で道のりを示してみる。「砂漠の音楽」に感動して打ち震えるみたいな体験はまだまだ先のような気がします。いかがですか?ミニマル得意な先生。

収録曲

Clapping Music

「長さの異なるフレーズを繰り返してだんだんずれてゆく」を楽しむ。ライヒは、これを「位相のずれのプロセス(phase shifting process)」と名づけたそうです。


たたたんたたんたんたたん ×n
 たたんたたんたんたたん ×n

Discipline」式ですね。これを「ポリリズム」と呼ぶか呼ばないか広義か狭義かは人それぞれこだわりがあるようですが、当ブログでは「ポリリズム」に含めます。これは聴くよりやってみたほうが楽しいと思われます。

ELECTRIC COUNTERPOINT

こちらも、「位相」系。ベスト版には、パット・メセニーのエレキ&アコースティックギターの多重録音によるパート(「3」)が収録されている。ギターだけあって、さらに Discipline 度は高まる。物憂げで温かみのあるサウンドが心地よい。

Gordian Knot

この音源を聴いてただいまハッと思い出したのが、Gordian Knot というプロジェクト。元 Cynic *1のショーン・マローン&ショーン・メイナードと King Crimson のトレイ・ガンが組、ゲストに Dream Theater のジョン・マイアングが参加したりとプログレ←→HR/HM 夢の競演が実現した*2プロジェクト。「Reflection」なんか、この「ELECTRIC COUNTERPOINT」をロックにアレンジしたかのよう。ミニマルでありながら HR/HM。このアルバム、地味ながらも飽きることなく永遠に聴き続けられる名盤だなあと思っていたが、音楽的造詣の深さもさすがだなあと見直してみる。お気に入り度:89点

参考:GORDIAN KNOT

Youtube には、その他のパートの音源が原曲からライブまでちらほら。

Different Trains

「Different Trains」組曲から「before the war」。弦楽五重奏+サンプリング(人の話し声)という組み合わせ。会話で発せられる言葉にも、音程はある。絶対音感を持ってる人は、「あんたの今の単語はドミレーミ♭だな、お前、顔だけじゃなくてメロディもサムいな。マジ死ねばいいのに」みたいに採譜できる。そうやって採譜した人の声と、ミニマル五重奏が協奏してみせる。

はいこんな具合。実験的。実際に音楽の上に人の声を乗っけることによって、絶対音楽を擬似的に会得した体験を味わえるんじゃないかと思った。実際の絶対音感の人が音感モードに入ったときにどう聞こえるかは知る由もないのだけれど。どうなんすか?

Drumming

「Drumming」から「Pt.4」。打楽器による「位相のずれ」の発展。Pt.1〜Pt.4 にかけて以下のような技法を取り入れている。

  • 同じリズムを絶え間なく繰り返している間に
    1. 音と休止を少しずつかえていくこと
    2. リズムとピッチを同じにして音色をかえること
    3. 異なった音色の楽器を一緒に組ませること
    4. 楽器の音をそのまま真似る声を入れる

なんかさっそくなんかやってみたくなりますね。

動画は「Pt. 2」の抜粋。King Crimson が「Waiting Man」などでやりたかったことが垣間見えます。クリヲタですみません。

Sextet/Nagoya Marimbas

「六重奏曲」より第 5 楽章。そしてナゴヤマリンバ。いずれもマリンバを中心とした多重奏。前者はピアノが盛り上げる打ち付けるようなリズムがプログレッシブ。そのまんま '70 年代クリムゾンが演奏したらいいと思う。「Fracture」(の後半)と「Discipline」が混ざったような名演になろうて。クリヲタですみません。

動画は「ナゴヤマリンバ」。ほんとクリヲタですみません。

New York Counterpoint

「New York Counterpoint」より第 1 楽章。

「ELECTRIC COUNTERPOINT」を吹奏楽に編曲した感じ。

だんだん 1 曲 1 曲毎に何か言うパワーがなくなってきました。

City Life

「City Life」組曲より「Check it out」。「Different Trains」のように、音声と競演するパターン。こちらは管弦楽。今までは比較的取り留めないないポリループがポリポリしている曲ばかりでしたが、こいつはとても「音楽的」。地に足が着いたマイナーコードで、メリハリを持って音楽が展開する「ちぇけらー」のサンプリングを添えて。こんなことゆっちゃうと元も子もないような気がするが、この曲が白眉だなあ。

The Desert Music

「砂漠の音楽」より第 1 楽章。

動画は第 3 楽章の前半 1/3。全 5 楽章。89名の四管編成オーケストラ+27名に混声合唱による超大作。第 3 楽章の真ん中ですべてがひっくり返って全体が対象になるという、対称性への想いをぶちまけた執念の楽曲。こいつがくせもので、本当に終わりの見えない砂漠を進んでいるような気分になって全章通して聴くのはとても疲れる。でも、このベスト版みたいに抜粋して聴くと逆に緩急がついてとても映える。

The Cave

「The Cave」組曲より「Genesis XXI」。「City Life」のように音楽的。

動画は全編の超ダイジェスト版。これはとてもいい MAGMA ですね。

Music For 18 Musicians

「18人の音楽家のための音楽」より「Plus」「Section 1」「Section 2」。ライヒ代表作。

こんな調子でゆるーやかに変化しながら延々とつづきます。ミニマルの王道かつひとつの頂点。でも、いきなりミニマル耐性の低い人が全編を聴くのはかなりしんどいかと思われます。一定のパルスのポリループがちょっとずつちょっとずつ入れ替わり立ち代りでフレーズを変化さえながら、時には明るく、時にはちょっと暗くかすかに表情を変えながら続く音楽。全体のうねりに身を任せてうっとりしたり個別のループに真剣に耳を傾けたりしながら終わりまで楽しみ続けられるのはちょっとしたヘンタイちゃんだもの。

まとめ

なんか、単なる動画集めで終わってしまいました。つーかこれベスト盤の曲紹介じゃなくってそれを隠して「オレ厳選、ライヒを聴く」みたいなエントリーだったらあたかもライヒを知り尽くした通っぽくね?そういうヤリクチありだなふふふ。というわけで、ポリリズムポリリズムとカッっとなってないで、ちょっと傍らのミニマルを聴いてみる企画はこれでおわり。ちゃんちゃん。

でも、もうちょっとだけ続くんじゃ。

*1:名作「Focus」を発表して解散した幻のバンド。「Focus」も紹介したいのう。

*2:2nd では、King Crimsonビル・ブラッフォードもちょろ参加