「神話と伝説 〜第三章〜」MAGMA
アーティスト: MAGMA 出版社/メーカー: セヴンス・ジャパン 税込価格: 4,410円(税込)'05年仏『LE TRITON』で行われたバンド結成35周年記念コンサートの第三弾!本作では、MAGMA黄金期の名キーボード奏者Benoit Widemann(key)をゲストに迎え、'74年作『KOHNTARKOSZ』から'77年作『ATTAHK』までの名曲ばかりの演奏!未完の大曲'Emehnteht-Re Part1&2'に加え'The Last Seven Minutes'数々の名曲演奏します。第一/二弾と共に、当然ながらMAGMAファンは必見です!!
- Kohntarkosz
- Lihns
- Emehnteht-Re
- Emehnteht-Re Part I
- Rindoh
- Emehnteht-Re Part II
- Hhai
- Zombies
- Nono
- The Last Seven Minutes
あらためて、ハマタイ!僕です。
はじめはおなじみ「Kohntarkosz」。やっぱり、コンタルコスは苦手です。30 分余にわたる長大な二次関数。終盤一気に盛り上がる様は相変わらずすごいのだけど、そこに至る道のりは険しい。ここでは、クリスチャンのめまぐるしい『すごい顔』に注目していると飽きずにやり過ごせる。
「Lihns」はライブアルバム『Hhai/Live』('75)より。クリスチャンがボーカルをとる美しい小曲。安らかな顔で歌っている。後で登場する「Hhai」もそうだけど、歌うクリスチャンの姿しぐさは全身が旋律で満ち溢れて音楽と交信しているようで神々しい。
ここで休憩。楽屋には性懲りもなくヤニック・トップ。
続いて「Emehnteht-Re」。長らく未完の大曲だとかモンスター未発表曲だとかと人々が煙に巻かれていた「Emehnteht-Re」が、着想から 30 年を経て「だいたい完成」をみた模様。中身は、今までいろいろなアルバムに散発的に発表されてきた音源の組曲。
「Emehnteht-Re Part I」はアルバム『Hhai/Live』(2枚組み版)より。不気味なコーラス。それはあっさり「Rindoh」へ移る。アルバム『Attahk』('77)。ここではヒミコのソロがとても美しい。続いて、「Emehnteht-Re Part II」。アルバム『Udu Wudu』('76)にボーナストラックとして収録されたことがある。「Kohntarkosz Anteria」に似たようなモチーフがあるアップテンポなパート。これが滑り込むように名曲「Hhai」(アルバム『Hhai/Live』初出)へつながっていく。歌うクリスチャンは強い霊気を帯びている。その霊気はその後、ギター氏に憑いたようだ。ちらっと映る顔が呪われている。シャナク!
10 年前、'96 年のライブより。たった 10 年前なのにクリスチャンはずいぶん若く見えるな。
というわけで、「Hhai」がひとしきり盛り上がると(余韻の部分はもっとコンパクトだったらいいのに)、クリスチャンが短く歌って劇的に「Zombies」(アルバム『Udu Wudu』より)へなだれ込む。アルバム版では、「De Futura」のミニチュアみたいで目立たなかったけど、「Emehnteht-Re」の終末に位置づけられることで凶暴化した。この物語の主人公である Kohntarkosz の身に何があったのだろうか心配になります。
▼ Magma Web Radio by oLLo & Denis Desassis
MAGMA の歴史をベスト版的に聞くことができるオフィシャルのストリーミング配信ページ。「Emehnteht-Re #1」からの曲順が、なんで年代ばらばらに並んでいるんだろう?とずっと疑問だったのだが、この組曲「Emehnteht-Re」の曲順だったのだ。謎が解けてぽぽんと膝を打ってそんな意味があったのかと軽く感動した。
最後は、「Nono」と「The Last Seven Minutes」。アルバム『Attahk』の最後と最初の曲。「Nono」はあまり取り沙汰されないけど、隠れ気味な名曲だと再認識。「単調、不協、繰り返し」と「複雑、協、進行的」の対比がとても鮮やか。ボーカル氏もココロ、カラダ、みなぎっている。「The Last Seven Minutes」は隠れもしない表の名曲。半分ちょっとだけど Youtube にあがっているのでお聞きあそばせ。
まとめ。個人的になじめない「Kohntarkosz」の前半を除いてとてもいい作品。各曲が変化に富んでいて飽きない。「神話と伝説 〜第二章〜」は絶品だけど、超大曲ばんばんばーんで疲労困憊になるのと対称的。ステラは美声。
- http://d.hatena.ne.jp/fractured/20060921/1158867468
- http://d.hatena.ne.jp/fractured/20061221/1158867468
「Attahk」MAGMA
関連。'77 年。フランス製。
これまでのマグマにケリをつけ、次のマグマへ生まれ変わる意思を表明したアルバム。
1 曲目「The Last Seven Minutes」は、副題「1970-1977 第1段階」とされ「これまでのマグマ」にケリをつける最後の 7 分間。その対極にある最後 7 曲目の「Nono」は副題「1978 第2段階」とされ「次のマグマ」を指向する。音楽的には逆だと思うが。それぞれ名曲の類である。
2 曲目「Spiritual」は、コルトレーンのそれをコピーしてくるかと思いきや、ゴスペル風味の陽気な曲である。その対極にある 6 曲目は、「Lihns」や「Hhai」のような平和な曲。いずれにしても、クリスチャンの歌に対する想いが溢れる佳作。マイケル・ジャクソンとポール・マッカートニーのデュエット「The Girl Is Mine」の掛け合いを一人でやってるような歌唱が聴き所。
▼「The Girl Is Mine」Michael Jackson and Paul Mccartney
幻想的なコーラスが 3 曲目「Rindoh」(前掲 Magma Web Radio で聴けます)は、本来「Emehnteht-Re」組曲の一部だけど、ここでは 4 曲目「Liriik Necronomicus Kanht」、5 曲目「Maahnt」の前奏として見事に機能している。タイトでちょっとファンキーなリズム、素直で分かりやすい展開、それでもちゃんと張り詰めた緊張感、「次なるマグマ」のバランス感覚を提示している中核部分である。であるからなんなんだろう。
でで、次のマグマってどうなるのよ?っと思っていたら、次のアルバムが '85 年の「Merci」で、なにがなんだか分からんほど変貌していたわけ。その謎を埋める存在が後発されたライブ版「Bobino, 1981」なわけだが、その話はまたどこかで。
往年の「いわゆるマグマ像」とはかなり異なる作風であるが、そういうのを期待しないで素直に聴けば良作。
お気に入り度:82点